013号室 (GEN side) ページ14
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「最近また忙しそうだね」
「そうなんですよー。本屋の後輩アルバイト君が急に辞めちゃって。というか音沙汰無し」
「うわ、最悪じゃん」
「もうやめてくれ〜!って感じです」
派遣の方も人足らんとかめっちゃ言ってくるんですよー、なんて言いながらグーンと伸びをするAちゃんは、やっぱり疲れた顔色で。
そんな彼女は俺と顔を合わせるや否や軽く笑っては、
「大丈夫ですって。ほら、自分のことは自分がいっちゃんわかってるんですから」
なんてちょっとおちゃらけて言ってくれるけれど、俺だって伊達に君のことを見てきたわけじゃないよ、と、思う。
「……昨日も、仕事だったんだよね」
「そうです。今日は束の間の休み!」
だから、お隣さんのよしみってことで、本当はもっと聞きたいことがある、のに。
『いってくるわ。まあ俺の方が早いと思うけど』
『はいはい、いってら』
『また連絡するから』
昨日の朝、君の家から出ていった、俺よりもはるかに背の高い男は、誰?なんて。
なんでそんなに親しげだったの?とか、合い鍵渡すほどの仲なんだ、とか。
「では、吉留さんはお仕事頑張ってくださいね」
「……」
「……吉留さん?」
「……うん。ありがとう」
俺は、やっと下の名前を人づてに聞いて突然呼んでみたって何も言われないし、未だに君からはほとんど誰にも呼ばれない名字呼びで、相変わらずなにも、君の方へは踏み込ませちゃくれないのに。
それが、悔しくて、たまらないのに。
「……カッコ悪、俺」
閉まった扉の奥で、呟く。
なんだよ。
「好きなんじゃん、」
ただ心配なだけなんて、そんなの言い訳だった。
やっと気づくなんて。
Aちゃんに男の影が見えてから自分の気持ちに気づくなんて、こんなのダサすぎる。
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ちわわ - 初めまして!もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…? (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 初めまして!とても素敵な作品ですね!続きが気になります!第2章のパスワードを教えていただけますか? (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです! (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして!素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです! (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)
巻 - 好きです、でした、、汗 (2020年2月14日 1時) (レス) id: bbe11dd873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年9月11日 12時