年上、年下、同い年。2

△3秒の猶予 (口煙草 Vo.) 02 ページ6

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『なあ、拓也。あのあそこにいる金髪で髪結んでる人、拓也んとこのスタッフ？』





あの暑い夏の日、『めっちゃ横顔かわいかったんだけど！』とウキウキしながらAさんの後ろ姿を指さしながら聞いてきたGENのことを思い出すも、あの時俺はなんて答えたのか、いまいち思い出せなくて。





「……やっぱり気になるんじゃないすか」





ただただ、Aさんだけは誰にも見つからんといてほしかったのになあ、なんてどす黒い独占欲、のようなものが自分の中に渦巻いていたことだけが、記憶に残っている。





「……すみません」

「まあたしかにGENはかっこええし歌もうまいし、おまけにお揃いの金髪ですもんね〜」

「……ぐうの音も出ない……」






……否定せえへんねや。

段々とイライラしてきたこの感情をぶつける術はもう想いを伝えてしまうしかないのだろうが、まったく脈ナシであることがひしひしと伝わってくるのでそれもどうにもできやしない。





「……ほんとは、山中さんが髪を切りに行っていたタイミングで私も切りに行くつもりだったんです」




するとぽつりぽつりとAさんは静かに話し出す。





「でも急にあきらくんに呼ばれたり、なんか企画書に不備があったりだなんだで……！もう結局切れずにもう2ヶ月くらい経っちゃってるんですよ」

「……え、何の話っすか」

「え？髪の話……ですけど」






俺がポカンとしていると

「っあ、そ、そうですよね興味無いですよね私がずっと髪切りたいなーって思ってることとか！」

と早口でまくし立てられてさらに呆気に取られてしまった。





「Aさん……髪、切りたいんすか？」

「……切りたいんです。だから、というかさっきからずっと言ってますけど、GENさんくらい切りたいなーかわいいなーと思って見てたんです。……恥ずかしながら」

「……」

「……黙らないで一言くらい言ってください……」







そう言いながら手のひら全体で顔を覆うAさんが、なんとも愛しくて愛しくてたまらなくて。






「……かわいい、」

「あーもうそうです、GENさんの髪型がかわいいなって思ったんですすみません！」





いや違いますよ、あなたがむちゃくちゃかわいいんです。

ああ、いますぐ抱きしめて好きって言いたい。長くてもかわいいから切らんといてくださいって言ってやりたい！！！






俺の体が動き出すまで、あと、わずか3秒。







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次でラスト！

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