◆トマトジュース (生意気犬 Vo.) ページ15
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お前は今歌を歌ってるのか?と言わんばかりの声量で「え」の文字が電話越しに聞こえて来て耳と頭が痛くなる。
ああ。やっぱり電話するんじゃなかったか。
《ちょ、見舞い行くから!待ってて》
「いや来なくていいって、」
《絶ッ対行くから!》
……なんて思いながらも、いつもの慎ちゃんより強めの口調で切れた電話のおかげでちょっと心細かった寂しさが和らいでいく気がして、やはり彼氏様様なんだなーとぼんやり天井を見つめながら考えていた。
しばらくすると彼はほんとにバタバタとやってきて、
「A!大丈夫!?」
なんてまるで私が事故にでもあったかのような駆けつけ方をするもんだから、もう笑いをこらえるので精一杯だったりもするんだけど。
「いや別にただの風邪だから。ほら、そこのマスクして。うつっちゃだめだから」
「え、あ、うん」
「お見舞い品だけもらうよ。ありがとう」
「え、起きて大丈夫なの……?」
「大丈夫だって。なに買ってきてくれたの」
そう私が言うとキランと一瞬目を輝かせて「待ってて」と言い、シャカシャカ音を立てながら大きく膨れ上がったスーパー袋を持ってくる慎ちゃん。
「ゆいかが教えてくれたものがほとんどだからね、役に立つと思うんだけど、……じゃん!」
「……出たよ」
「いや風邪の時にはこれでしょ!トマトジュース!はい、今飲んで」
「えぇ……」
「いいからいいから」
いやこいつは看病しに来たのかトマトジュースを飲ませに来たのかなんなのか……
と呆れながら思いつつも、そんなワクワクした顔で見つめられては断れる訳もなく。
「……いや美味しいけどさ」
「でしょ?まだあと3本あるから飲んでね」
「いや多いな……。もう今いらないから机の上に置いておいて」
多くないよ少なめにしたんじゃんかーとブツブツ言いながら私の飲みかけをテーブルまで持って行ってくれる、
……と思いきや。
「……これ、残り俺が飲んじゃダメ?」
「いやそれなら新しいの飲んでいいよ、3本もいらないし」
「……うーん、……いやだってさ、」
なぜかこっちに戻ってきてグイグイ近づいてくる慎ちゃんはやけに真剣な顔つきをしていて。
「……Aにチューしたいのにできないじゃん?」
「……間接キスもうつるからだめ」
「えー!!ケチ!」
「いやケチとかじゃないんだけど」
でもいまいち格好のつけきれない、石原慎也なのであった。
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かか - ヨムヨム様、はじめましてかかと申します。前作から色々読ませていただきました!とてもドキドキする作品ばかりでした。健司さんの歳上彼女の小説が切なすぎて泣いてしまいました…とても好きです、、!健司さんのクリスマスデートのお話が読んでみたいです (2019年12月25日 1時) (レス) id: f7b225b8cd (このIDを非表示/違反報告)
みみ - また新しいやつ作ってくださいー! (2019年12月15日 11時) (レス) id: 9d378c9bf2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨムヨム(プロフ) - のぞみさん» 三原兄弟板挟み…私も大好きなシチュですたまらないですよね……。ひっそり応援、こっそり感じておきますね!ありがとうございますー! (2019年9月16日 7時) (レス) id: cd469b8f7b (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ(プロフ) - 好きなバンドばかりで軽率に好きです関西弁たまらん、、、三原兄弟板挟み増えて欲しいです!これからもひっそり応援してます、、、! (2019年9月15日 9時) (レス) id: 1c3d50932b (このIDを非表示/違反報告)
ヨムヨム(プロフ) - とろろのすけさん» どハマりしていただいているようでなによりです。感想読みながらまっしゅの面々を浮かべてニヤニヤしてしまいました。フレ三原弟のリクうけたわりましたー!少々お待ちを! (2019年9月3日 20時) (レス) id: cd469b8f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年8月29日 22時