▽杞憂に終われば (フレデ Ba.) 02 ページ12
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「……他に、男できたんちゃうん」
我ながら情けなさすぎる声だと思う。
でも本当の俺は強くもないし、かっこよくもないし、健司よりも優しくなんてぜんぜんない。
Aが思ってるよりも何倍も、俺はいい彼氏なんかじゃない。
「だから、……」
「……だから、なんですか。話が一向に読めません」
ベットに寝ていたAはいつのまにか俺と向き合うようにベットの上に正座で座って、俺の同じ目線の高さになっていて。
「というか、私の方が、そう思ってたのに」
「なにそれ。そんなわけ、」
「だって最近康司くん、……あからさまに不機嫌だったじゃないですか」
「……それはだって、」
……だって。
言いたいのに、口を噤んでしまう。そんな怖がりでかっこわるい俺の次の言葉を優しいAはジッと待ってくれる。
不安そうに、でもまっすぐ、綺麗な目で俺を見つめながら。
「……じゃあ、それはなんなん?」
「……それって、なんですか」
あかん。あかんで康司。
そんな目で見つめられて、急かされてしまってはそう自分に言い聞かせてみたところでもう遅い。
Aの白くて、綺麗で、穢れのない首筋につけられた不自然なほど目立つ『それ』しかもう俺の目には入らなくて、吸い寄せられるように近づいていってしまう。
「……、な、まっ、」
「ジッとして」
「……ん、……くすぐ、ったい」
優しく、それでも少し荒く『それ』に口付けるようにすると、Aは身を攀じるようにするも逃げずに俺の服をぎゅっと掴んでくる。
「……誰に付けられたん?」
「……誰って、」
「もうとぼけんでええよ。その首の赤いキスマーク、俺が気づいてへんとでも思った?」
未だに目を見開いたままなにも言ってはくれない彼女を優しく白いシーツの上に押し倒せば、また、その赤い印がやけに目立って。
さもどうぞ見てくれ、と言わんばかりに俺の視界の中に入りこんできて。
「……なんでなん、」
腹立たしさしかないはずなのに。
ずっとそれが邪魔で邪魔で仕方がなくて、もう見たくないから、だから彼女を手放そうとさえ思っていたのに。
「なんで、……俺じゃ、あかんの……?」
どうしてこんなに胸が、心が、どこかしこが苦しくて仕方ないんだろうか。
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かか - ヨムヨム様、はじめましてかかと申します。前作から色々読ませていただきました!とてもドキドキする作品ばかりでした。健司さんの歳上彼女の小説が切なすぎて泣いてしまいました…とても好きです、、!健司さんのクリスマスデートのお話が読んでみたいです (2019年12月25日 1時) (レス) id: f7b225b8cd (このIDを非表示/違反報告)
みみ - また新しいやつ作ってくださいー! (2019年12月15日 11時) (レス) id: 9d378c9bf2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨムヨム(プロフ) - のぞみさん» 三原兄弟板挟み…私も大好きなシチュですたまらないですよね……。ひっそり応援、こっそり感じておきますね!ありがとうございますー! (2019年9月16日 7時) (レス) id: cd469b8f7b (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ(プロフ) - 好きなバンドばかりで軽率に好きです関西弁たまらん、、、三原兄弟板挟み増えて欲しいです!これからもひっそり応援してます、、、! (2019年9月15日 9時) (レス) id: 1c3d50932b (このIDを非表示/違反報告)
ヨムヨム(プロフ) - とろろのすけさん» どハマりしていただいているようでなによりです。感想読みながらまっしゅの面々を浮かべてニヤニヤしてしまいました。フレ三原弟のリクうけたわりましたー!少々お待ちを! (2019年9月3日 20時) (レス) id: cd469b8f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年8月29日 22時