９コール目 ページ12
＿
マンション 一階にて
ガツン！と鈍い音が鳴った。親の声と一緒にいつも聞いた音、フラッシュバックも去ることながら、二度とは聞くはずのない音。
「...ッきょーサン、こっち来て！早く！！おねーさんも！」
「え？なんやどりみー……あー、分かった！！」
きょーさんがぱたぱたと走っていくと、入れ替わってれうさんが顔を覗かせる。
「え...何これ、酷い...あれなんか生えてね？気のせいかなぁ」
「エ？ンー...？あ！アル！なんかある！」
可愛らしい女の子の頭には、ひょこっとちいさな耳が生えていた。
じーっとその子を見詰める。
無理に触ってなんかあったら嫌だから。
れうさんは救急箱を取りに帰り、ひとりでぽつんと固まった血の匂いを嗅いでいた。
数十秒か経ったとき、ぱたぱたという足音が強くなって響いた。
「緑！倒れてる子が居るって、聞いたんけ、ど？」
「ア、こっち…」
既に息切れしているお姉さんの袖を引く。あのこ、もう死にかけだ。
取り返しの付かないことになる前に、早くどうにかしなきゃ。
＿おれは、もう“助ける”側になったんだ、から。
「...！この子、ああ、酷い...、よし緑！運ぶから、手伝って！」
「ウン、分かった」
おねーさんは階段を登るのは多分無理。だから、俺が先回りして扉を開けて、れうさんの所に行く。カンカンと金属音が耳をつく。段々浅くなってくる息を整え、酸素を精一杯取り込む。
彼を護る為に。
＿
かふ、と咳を漏らす小さな背中。酷い外傷と軽い熱、それから、人のではない耳。
この子は一体何だろう、と考えれば、獣人としか言いようが無く。ファンタジーにしかいないと思っていた存在。しかし目の前で苦しみあえいでいるのは紛れもなく、獣人である前に、小さな子供だった。
「...ﾝ゛、ぁ゛、が...ぐ」
「！！如何したの、苦しい？痛い？」
「あ゛、...うぁッ...ｺﾞﾎ、ぇう゛...」
嘔吐症状。眉間に皺が寄る。
これではまるで重度の感染症だ。
ここまでなるほど放っておくなんてあり得ない。外傷は膿んで、水っぽくなっている。こんなになるまで痛め付けられたのか？
やはりこのような見目だからだろうか。きりきり頭が痛んだ。
「...どこ？、ぐっ、ちは、あろさ、げんじ...う、ぇ」
「無理しないで、はい深呼吸。吸って、…吐いて。
大丈夫、大丈夫。貴方の心配事は終わっているんだから、ね」
「…。………」
咄嗟についた嘘。
上手く繕えてただろうか。
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らとるだお() - っグワァ…可愛いすぎる‼︎最高ですねｯｯｯｯ！←何気に初コメでした (2022年4月13日 3時) (
レス) @page25 id: f62a5d0896 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテ会＠羊羹は神 - 好きです。 (2022年1月9日 20時) (レス) @page25 id: b5934403b4 (このIDを非表示/違反報告)
烏 - sukodesu…あとみんな好きなものに友達とゲームはいってるの良ですね…！ (2021年8月6日 20時) (レス) id: 8c6f3d1c48 (このIDを非表示/違反報告)
らつ - みっちーさん» ヒインありがとうございます…モチベ！！！！！です！！！！！ (2021年7月27日 22時) (レス) id: d4b8270ffa (このIDを非表示/違反報告)
みっちー(プロフ) - うおおおお更新ありがとうございます！文才が…！！いやぁ表現もストーリーも大好きです！これからも無理ない程度に頑張ってください！！！！！ (2021年7月26日 0時) (レス) id: 42a4ed42e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：散歩雨 | 作成日時：2020年5月13日 14時
