神童拓人：音感 ページ2
音楽の授業が終わったところだった。
「ちょっと、あたしの指踏まないでよ」
「ごめん」
「先生、今日の部活って16時半からですよね。」
「ねえ澤田、これなんの音?」
ふざけて男子がピアノで遊んでいる。
「「ソシャープ。」」
私が言うのと全く同じタイミングで好きな人の声がした。
「神童さん？さっき言ったのって。」
「ああ。松永さんだったのか。」
「うん。昔からわかるから。神童さん、ピアノ習ってるもんね。」
いや、習っていると言うか、なんかそれ以上な気もするけど。
何より、こんなわたしが神童さんと話せるなんて。
「そんな、さん付けだなんて、同級生なんだしいいよ。」
「あ、うん。わかった。神童、」
「俺も松永って呼ぶけど、いいよな、」
「うん。」
微妙に気まずい。さっきまで隣にいた百合は消えてしまった。
百合め。私の想いを知っているからっておいていくのかよ。
「そういえば、松永は音楽やってたのか？」
「いや、弟がピアノ結構やってて、それで聴いてたら。」
「それはすごいな。俺は弾いてて音感がついたからな。」
ふたりで廊下を歩いていたらいつのまにか教室に入っていた。
「あっという間についてしまったな。楽しかった。あっ、放課後、部活終わったら待ち合わせて帰らないか。俺は松永ともっと話がしたい。」
急に、しかも照れ臭そうにそんなことを言われるなんて。みるみる顔が熱くなっていく。
「いいよ。今日部活あるから。」
「本当か、うれしいな。」
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
このとき早々に立ち去った百合は霧野と顔を見合わせてガッツポーズをした。
彼らがカップルになるまであと数ヵ月。。。
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作者名：ｽｽﾞ | 作成日時：2024年3月11日 10時
