イナイレ夢短編集【SPIN】 (ページ1)

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吹雪士郎:秘密ページ1

「ねぇ、Aはわかる？あのさ、吹雪くんが黙ってる時、ちょっと怖くない？」
「ああ、確かに。」

元から吹雪にはマフラーを触る癖があることぐらいしか知らないけれど言われてみればそうだ。黙った吹雪はいつもそうだ。黙って空を見つめて、マフラーを固く握りしめて、また何かを始める───どこか悲しそうに。

「なんか、悲しそうだよね、吹雪は。」
「うん…」

そんな話をしながら校舎を出るとちょうどサッカー部が練習ゲームを始めていた。

…！

あのおっとりした吹雪の髪が逆立った。前線へかけていく。あいつは前DFだって言ってたはずなのに。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
8年前。
小学校から帰ってきてひとりで遊びに行った時、白いマフラーをつけたボールで遊んでる男の子がいた。

「どこ小？」
「ん？俺はまだ幼稚園だぞ」
「名前なんて言うの」
「アツヤ、×××アツヤ。」
「私はAA。サッカーやってるんでしょ。一緒に遊ぼうよ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「…吹雪アツヤだ。」
「どうしたの、A」

どうしても思い出せなかったあいつの名前を今思い出した。
サッカー、雪崩事故、マフラー、ニュース、犠牲者、吹雪アツヤ
黙った時のあの悲しそうな表情を思い出す。きっとあいつはアツヤのこと考えてる。
吹雪士郎はまさかアツヤになろうとしているのか、それも飲み込まれるように。

「…A、大丈夫、？そんな真っ青な顔して。具合悪いんでしょ、もう、帰ろう。」
「ちょっと、待ってて。」

休憩に入ったサッカー部がいるグラウンドまで走る。どうしてかわかんないけど今行かなきゃ行けない気がするのだ。

「ねぇ、吹雪。」
「どうしたの？そんなに走って。」

そこにはいつもと変わらない吹雪士郎の姿があった。マフラーはつけているけれど。

「ねぇ、あなたはアツヤになろうとしてるの…？」
「！」

私は吹雪士郎の秘密を知ってしまったようだ。