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うずまきにて珈琲を注文する。
彼女の事を知れる、うまくいけば距離を縮められるいい機会だ。
彼女の好きな食べ物はオムライス。
そう頭にメモした時、
「太宰さんは珈琲しか頼んでいないようですが、何か食べないんですか?」
バレたか、と笑って誤魔化した。
そりゃ、誘った本人が珈琲だけと言うのはやはりあからさまに怪しかったようだ。
「実はお腹空いてなくて…
Aちゃん仕事詰めだったし、一緒に休憩しちゃおうかなって思っただけで。」
もちろん『一緒に居たいから誘いました』なんて口が裂けても言えない。
彼女は少し首を傾げたが、それ以上は何も聞いてこなかった。
不意に、沈黙が走る。
彼女は一瞬外を見て、私に視線を戻した。
その一瞬一瞬も絵になるようで、綺麗な髪と瞳。
控えめで本人の可愛らしさを引き立てるような服。
その時に揺れた髪の毛からふわり、と。
先刻手を握った時と同じ、甘くて優しい匂いが香る。
ああ、あれは妄想なんかじゃない。
彼女の髪の匂いだ。
そう思うと無性に心臓が高鳴り始めた。
「…………ありがとうございます」
むしろ申し訳ない。本命は仕事詰めの君を休ませる事より私が君といたいからなんて言う私欲にまみれた理由なんかで…。
と、そこで思考を中断した。
嬉しそうだし、嘘は言っていないから結果オーライかな、なんて思いながら返事代わりに微笑む。
すると彼女も少しだけ、私を見て微笑んだのだ。
まるで花が咲くようで、彼女の周りだけが輝いているように見えた。
心臓がぎゅんっと縮むような感覚。
ああ、甘い。私の初恋にして初の甘さ。
その笑顔があまりにも甘過ぎて、
この子以外、見えなくなってしまうじゃないか。
*
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紅月天音(プロフ) - 霊夢どうふさん» ありがとうございます!!更新は遅いですが、お話の質は落とさないようにしていきたいと思います! (2018年7月26日 13時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - 芥川さんが多い上に描写がふつくしすぎる!更新頑張って下さい! (2018年7月26日 1時) (レス) id: 8add41b466 (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - ワッさん+aさん» 素敵な感想をありがとうございます!!今後も期待に応えられるようにお話を作れたらいいなと思いますので、よろしくお願いします! (2018年3月31日 12時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - 背景と、主人公の心情の移り変わりがとても細かく書かれていて素敵です!!!! 惚れました!!!!之からも楽しみにしています!!!! 更新頑張って下さい!!! (2018年3月30日 21時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - 紫猫日和さん» 大変長らくお待たせいたしました!すみません、芥川sideは難しくて中々筆が進まず…!ようやく完成いたしました!リクエストありがとうございました!またお気軽にどうぞ! (2018年1月24日 17時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅月天音 | 作成日時:2017年10月16日 17時