トゥーセッ！4

緩み ページ46

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髪型が変わった次の日からはMVの撮影も始まった。

今回は俺たちのMVで初めて、一切ダンスがない。
それを聞いてジンヒョンとナムジュンは飛び跳ねて喜んでた。
I NEED Uのフリは曲の割に難しい所が多いから、まぁ２人の気持ちが分からなくもない。俺はストーリー性があって好きだけどな。

でもダンスを撮るとなると、何十回も繰り返し撮影が続くあの辛さが蘇ってくるから、やっぱり俺も嬉しいかも。



「よーい、アクション！」


まるでドラマか映画の撮影のように進むMV撮影。ダンスがない代わりに、ストーリー仕立てで進むそれは、慣れないしちょっと照れくさい。

メンバーそれぞれ簡単に役柄？設定？そんなものが決められていて、個別撮影が多くあるらしい。

自分の撮影まで時間があったから、トップバッターだったホソクとジンヒョンの撮影現場を少しだけ覗きに行ったんだけど、２人ともすごく上手かった。
役になりきってるって言えばいいのかな。演技だって分かってても、見てて切なくなった。
いつも明るい俺たちだから余計にそう感じるのかもしれない。


俺の役は、『生きることを諦めようとしている青年』らしい。
自分の人生を自分で終わらせようとする人。
まるでいつかの自分に重なるようで、設定を聞いた時は心臓が跳ねた。

撮影場所の屋上で準備してるとき「とりあえず好きに動いてみて」と監督に言われたから、ぎこちないまま動いてみる。

白いシャツにベージュのハーフパンツ。
ソウルのまだ寒いこの時期にこの格好は正直辛いし、吐く息はまだ白い。

手首には赤い紐が結ばれてて、風でなびいている。この先はどこに結ばれてたんだろう。
裸足のままビルの淵に座って足を揺らしたり、立ち上がって紐が吸い込まれていくところをぼーっと見下ろしたり。

曇ってるせいか星が見えない真っ暗な夜空を見てると、よく分からない涙がこぼれたりして。


ああ、危ないなと思った。

これじゃ本当にあの頃の俺みたいだ。

思い出さないようにしていた記憶の鍵は緩みかかっていて、いよいよ止まらなくなってきた涙を隠すように抱えた膝に顔を埋めた。



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