ツンデレすぎる護衛人【灰谷竜胆】

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ーーこの唇で、奪いにいく。







『…我ながら、めっちゃキザじゃん。』

交差点を渡っている最中にふと顔を上げると、ビルのスクリーンに映し出されたとある口紅のCM。

やりすぎじゃない？なんて思っていたが、
飛ぶように売れて、今ではどこのお店にも
“品切れ中”の札が。



流行というのは、とんでもない経済効果を生み出すのだ。





『…ま、売れてるならいーか。』

ふふ、と微笑み交差点を渡り切る。
きっと周りは気付かない。
そのCMに出演している、
今ノリに乗ってる女優“A”が
こんな昼間から、渋谷の人通りの多い交差点を特に変装もせずに渡っているということを。






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小さい頃から、容姿にはとても恵まれた。
今思えば美形すぎる両親、そりゃそうなるだろうな。



中学生のときにはスカウトマンが家にまで来た。
絶対売れる！そんな言葉がどうしても信じられなくて断り続けた。



高校生の時。
たまたま渋谷で友達と遊んでいたら、雑誌のスナップの撮影をしていたらしく、声をかけられた。
“それくらいなら…”軽い気持ちで隅っこの方に載った私を、｢この子は千人に一人の逸材だ！！｣だなんて騒いだのが今の事務所の社長だ。



雑誌のスナップ、読者モデル、専属モデル。
そして25歳になった今では売れに売れている人気女優。
お手本のような出世の仕方。





まったく、人生は何があるかわからない。



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