出逢い ページ1
街にはクリスマスの曲が流れていた。
『好きです、付き合って下さい』
思いのままに綴った手紙を
震えた両手で彼に突き出した。
「…ごめん」
彼はその一言を置いて私の元を去った。
思っていたより呆気なく終わった私の恋。
前々からこうなることは分かっていた、
でもなぜだか涙が止まらなかった。
去って行く彼の後ろ姿をただずっと、見つめていた。
クリスマスツリーの明かりに、その周りの人々に、
彼の後ろ姿に、目がくらんでしまいそうになった。
履きなれないヒールの靴と、スカート。
…私、こんなの履くタイプじゃないのに。
一人ぼっちの自分に虚しくなり、
クリスマスツリーの下に座り込んだ。
無心で、流れていく人を見ていた。
「おねえさん、
そこの綺麗なおねえさん、なにしてんの?」
『え、?』
辺りをキョロキョロと見渡し、
人差し指を自分に向けた。
「そう、おねえさんのこと。なにしてんの?」
『え、いや、別に…』
『あ、あなたこそなんですか?』
「俺?ああ、俺はねー、」
私の隣にしゃがみこんだ彼は、
私の目を見て、微笑みながら、
「綺麗なおねえさんが一人で寂しそうにしてるから、
俺が一緒にいてあげよっかなーって」
『なんですかそれ、やめてよ、』
失恋の傷からなのか、反射的に溢れる涙。
『やめてよ、ほんとに…』
「…ね、おねえさん、俺と1日過ごさない?」
『え、、は、?』
少し揺らいだ心を無視して、
私は立ち上がり彼に言い放った。
『無理です、帰ります。』
彼も立ち上がり、私の手首を掴んだ。
「俺がおねえさんの寂しさ忘れさせてやるよ」
彼の真っ直ぐな眼差しを見て、
"離してください"
その一言が言えなかった。
まともに判断出来ない頭に、
私の手首を掴む彼に、
寂しい失恋の心に、
私は流された。
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Kakityann(プロフ) - まといさん» ええ…!とても嬉しいです♡最後までご覧いただきありがとうございました! (2022年12月10日 10時) (レス) id: 33c9d37b4c (このIDを非表示/違反報告)
まとい(プロフ) - 最高でした……ストーリー早くて読みやすくて……今まで見てきた中で一番いい小説でした! (2022年12月9日 23時) (レス) @page20 id: 0d3bb14795 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kakityann | 作成日時:2022年12月4日 15時