愈史郎�� ページ4
そんな、花札のような耳飾りをつけた少年が今、あの鬼舞辻無惨と闘っている。闘志を燃やし、刀を握りしめ、その黒刀で刃を振るう。
珠代様は最後の最後でやってくれた。無惨に取り込まれてしまったけれど、愈史郎は涙を堪えて私の目から零れる涙を救ってくれた。
でも、ごめん、私たちは、私は、無惨が死ねば消えてなくなるの。
「あのね愈史郎」
「あの時、手を差し伸べてくれたこと、絶対忘れないよ」
「おい待て、何をする気だ」
焦る愈史郎の顔。
珠代様じゃなくて、私のために焦ってくれてるの？
「もうすぐ、アイツ……“無惨”は死ぬ」
あの呪いのようなものも、皮肉だね。自分の作った珠代という鬼のせいでこんなにも弱って、もはやゴミ屑も同然。
同じ血が巡る鬼だからわかるのよ、アンタに訪れる死の恐怖が。
「私にはもう、人間の頃の記憶はないけれど。
愈史郎、貴方がずっとずっと好きでした。」
「人間的に死んでしまおうって、迷っていた日に手を差し伸べてくれた。」
「実はあの日、もう何もかもむちゃくちゃにしてやろうって限界だったの。」
あなたがいてくれたから。
例え、珠代様の命令だとしてもいいの。行動してくれたのは貴方でしょ？
「また、会いたいな。愈史郎。」
「もう、日が昇っちゃうよ。愈史郎、隠れて」
「愈史郎、私……珠代様には劣るけど、貴方の心の支えになれてたよね」
初めて、初めてだ。ああ私はなんて幸せなのだろう。
好きだ。好きなんだ。いつも珠代様のために流していた涙が、私に向けられてる。
「ごめん、俺、助けられなくて」
「いいの」
「俺もまたお前に会えるなら会いたい」
背中が熱い。早く愈史郎を突き飛ばさなきゃ。
堪えて、私。根性だすのよ。
頑張れ、頑張って。
「ありがとう、愈史郎」
最初で最後の、私の勇気
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作者名：ヴィズ、いもじゃ x他1人 | 作成日時：2021年5月13日 22時
