雨柱。澄乃、推参 (ページ8)

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まだまだ夜は空けたばかり。
瑠璃色の空を眺めながらゆっくり、そして早く冨岡の屋敷に向かう。
そうでもしないと、昼頃には寝てしまうだろうから。

「今日は暑いね」

誰に呟いた訳でもないけど、今日は本当に暑い。
朝だというのに額に滲み出る汗。

「冨岡、開けてくれ。澄乃だ。」

「少し、話したいことがある」

任務終わりだったのだろう、きっちり履かれていない草履にあの半々羽織りを羽織っていない冨岡の姿。

まるで、「なんだ」とでも言いたげな不機嫌そうな顔に苦笑。

「入れてくれないか？」

「竈門少年のことで話がある。キミが助けたんだろう？
人と、人ならざる者の異質な兄妹を」

「なぜだ」

彼も私も任務で疲れている。
柱とは言え、人間だ。疲弊するのも仕方の無いことだろう。

「仲間の交だろう？教えてくれてもいいじゃないか」

私は冨岡が喜ぶ術を知っている。
口数が少なく、誤解されがちな彼には好意的な言葉が弱点である。
今もほら、見てごらん。ムフフと笑っている。

「あれは雪の降る山に行った時のことだった」

「ああ」

「鬼がいた」

それで？どうしたんだ？
相づちを打ちながら彼の文法のなっていない話を聞く。

「斧を投げられた」

「泣くから叱った」

う、うーん。
困るな。

「冨岡。私が聞きたいのは、その……なんだ。
ほら、何故妹だけが鬼になってしまって兄が生きているのか。
そして何故人を襲わない確証をもてたのか、だ。」