SALVATION″救い″ ページ9
わかってしまった事実。
苦い真実は飴をコロコロと転がして、そして泡沫のように消えていく。
ふわりと鼻につく甘い蜜の香り。どうにもこうにも、それにつられそうになる。
餌を目の前にした魚のように。
それが罠だとわかっていても私はそれについて行きそうになる。
こんのすけくんが心配そうに「えにしどの……」と、か細い声で呟く。
「貴女が鍛刀した鶴丸国永はどんな容姿でしたか?」
核心を突かれたーーー、とでも言おうか。
もし私の手を取ってくれた鶴丸さんがシステムエラーの黒い鶴丸さんだとして、じゃあ元の鶴丸さんはどんな容姿なの?
刹那、お香がこの部屋に漂う。
慣れ親しんだ、“白檀”の香り。
「スゥ……はぁ。白です。
私の本丸の鶴丸さんは白いのです。」
バレはしない。この香りはなんだと聞かれたら、妖精さんたちが定期的に焚いてくれる香だと言えばいい。
「そうですか……。
また来ます。」
役人が去った後、複雑な顔をして「バレてしまったな」と笑う鶴丸さん。
哀しい顔に胸が苦しくなる。
「いえ、私の鶴丸さんは貴方なのです。」
ジッと目を見つめ手を取れば、今度は面白おかしく声を上げ大笑い。
どうしたのかと問い詰めれば、彼は目に涙を浮かべるほど笑った顔で、「しすてむえらーだとしてもか?」と問う。
「はい。システムエラーだとしても、あなたは私の手を取ってくれたじゃないですか?」
今度は私の番ですよ、と手を握りしめる。
それから一緒の布団に入り、お香を焚き、豆電球を見つめながら彼の生い立ちを聞く。
「生まれたときから俺は黒かったのさ。
呪われた刀、妖刀だのなんだのと騒がられ、不気味に思った審神者は俺を政府に売り飛ばした。」
「目を覚ませば目の前は真っ暗闇。そしてビジョンとやらに映し出されたのは全審神者の動向。政府からの実験に飽き飽きしていた日々にキミは現れた。」
「霊力の使い方がアホみたいに下手くそなキミ。
暫く観察し、キミの元へ行こうと思ったのさ。普段から驚きを愛した俺がこうも簡単に驚かされたんだ。当然だろう?」
ニコッと笑い、私の頭を撫で、「おやすみ」と呟く。
まるで魔法にかけられたかのように私は微睡みに堕ちていく。
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唯丸乃輔 - 読ませていただいてます!頑張ってください!! (2020年8月19日 23時) (レス) id: fe2231d382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヴィズ | 作成日時:2020年7月23日 1時