お酒を友に ページ35
神社の駐車場で待っていた妖狸のタクシーに乗り込み、神社を後にした三人は、チェックインを済ませていた旅館へと向かっていた。
神社の敷地であろう森を通り抜ける。ゾムはタクシーの窓から、流れる森の木々を睨んでいた。
来るときには思わなかったが、秋も深くなった時期に、この木々たちが青々としているのはおかしいことだった。
そして気づいた。
神社に到着した時の、ぬらりひょんの表情を。
悲しいような、怒っているような、そんな表情だった。
ぬらりひょんは山の異様さを、もう理解していた。
あえてゾムやロボロに教えなかったのは、新幹線に乗る前と同じく、自分達を試していたのかもしれない。
山の異変に気づけないほどの実力なら、自分達は八岐大蛇討伐には向いていない。任務から即刻退場だ。
それだけ八岐大蛇は、生半可な実力じゃ相手にもならない、恐ろしい存在なのだ。
森を抜けたらしく、木々ではなく建物群が風景に流れ始めた。
ぬ「ゾムよ。」
今度は助手席に座るぬらりひょんからの低い声に、話しかけられるとは思わず、ゾムはビクっと肩を揺らした。
zm「な、なんや、爺さん?」
ぬ「妖気は見えたか?」
その言葉にゾムの脳裏に、満開の桜が映し出された。
桜を覆う、陽炎のような妖気。
zm「…桜…。」
さくらぁ?と隣に座るロボロが不思議そうにゾムを見た。
だがぬらりひょんは、それで全て察したようだった。
ぬ「あの山すべてが、八岐大蛇じゃ。」
ん!?とロボロが驚く。
すると、行き先を聞いた後、静かに運転していた妖狸の吉野が口を挟む。
た「わたくしたち狸族は、主に東北地方と近畿地方を拠点に、先祖代々、生きてまいりました。」
な、なんの関係が…とロボロが言い淀むと、ぬらりひょんはまあ聞け、と窘めた。
た「わたくしたちの狸族は、妖怪の中でも歴史が古いであります。様々な人間との時代を超えてまいりました。ここ、東北の土地も、どのようにして変わっていったか、身に沁みて分かっているつもりでございます。」
このタクシーの窓の外の建物が連なる風景も、いつかは田園広がる風景だったかもしれない。はたまた、戦後の荒れ果てた風景が広がった時代もあるだろうか。と、ゾムは狸の吉野の話を聞きながら、思いに耽っていた。
た「だけど、あの神社の山は、突然、現れました。ある日突然、当たり前のように、そこにあったのです。」
狸の吉野の言葉を聞きながら、ゾムとロボロは目を見合わせた。
404人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
舞茸(プロフ) - お待たせいたしております(-_-;)子供の新学期準備に、謎の喉の違和感と咳に投稿が滞っておりました。お楽しみ頂いている方には、本当にお待たせしてしまい、申し訳なく思います(_ _;)これからどんどん投稿してゆきます!!読んでいただき本当にありがとうございます! (2022年4月27日 0時) (レス) id: b96c8fba01 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 次の投稿楽しみにしています。お体にお気をつけて (2022年3月30日 21時) (レス) @page32 id: 2020323a87 (このIDを非表示/違反報告)
舞茸(プロフ) - 気づくのが遅くなり、申し訳ありません!!わざわざ投稿、ありがとうございます!!育児中のため、更新が遅いです、ご了承下さい。ですが感想頂くだけで、とても励みになります!投稿、頑張ります! (2022年2月18日 1時) (レス) @page32 id: b96c8fba01 (このIDを非表示/違反報告)
鴉 - ゾムさん、かっこええ...。 (2022年1月20日 12時) (レス) @page23 id: 9e2a714ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - 面白い!見つけられてよかった! (2021年12月22日 18時) (レス) id: 9754f34744 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:舞茸 | 作成日時:2021年11月7日 22時