片想いシンドローム

29 大倉side ページ29

プルルルー プルルルー プルルルー


何度も鳴る呼び出し音
全然でぇへん…


仕方ないから別のスタッフを誘って寿司屋へ行くことにした。

移動の車の中であくびしてたから、どうせ寝てるとかやろ。

無理矢理起こすんも可哀想やし、取り敢えず折り返しの連絡を待つことにした。



寿司食って、2軒目に誘われたけど
Aの事が気になって、ホテルに戻ることにした。


あ。あいつ飯食うてないかも…


ふとそう思い、
スタッフと別れたあと、また寿司屋にもどり
お持ち帰りで注文をとった。



我ながら、相当惚れ込んでしまっていると思う。

ずっとかわええ子やなくらいには思ってたけど
あの日の飲み会で見た、


頬を赤くして、愛おしげに
好きな奴の事を思って
照れたり、笑ったり、怒ったり、泣きそうになったりしている
あいつの姿に、全てもっていかれてしまった。


その全てが丸に向けられている事は、重々承知の上なんやけど…


それを自分に向けて欲しいって、
俺だけのにしたいって、

恋する乙女みたいやけど、只今全力で片想い中。

めちゃくちゃ推してんねんけどなぁ。
ぜんっぜん、ブレへん。

そんな所にさえも惚れてしまってる。







ホテルへ戻り、スマホを見るも
連絡はなし。


もう一度電話をかけてみると


プルルルー プルルルー プルルルー


やっぱりさっきと変わらず鳴り続ける呼び出し音。
あーあ、もう出えへんかな…

寝てるんやろうけど。
また無視されてるとかは無いよな





『もう！ほっといてください！！』

あの時の事がふと頭を過ぎる。


切羽詰まった冷たい目線と、振り払われた腕

今まで拒絶される事は多々あったけど
あれは本気の拒絶だった。


好きな奴からあんなされたらほんま立ち直れへんレベルのやつ。


まぁ。あぁなった理由はなんとなく分かってたんやけど…








そんな事を思い出していると、手の中のスマホが震える

画面にはAの文字


「もしもーし」

「もしもし、お疲れ様です」


電話口から聞こえるAの声が、少し低くてふわふわしていて、やっぱ寝てたんやと確信した。


「お前寝てたやろ」

「すいません、睡魔に勝てませんでした」

「飯食うた？」

「いえ、まだです。」

「じゃあ寿司買ってきたから、俺の部屋くるー？」

「お寿司…！」


寿司に反応して、パッと声色が変わった。
食べ物に吊られてんの、ほんまかわええ(笑)

Aが来ると決まり、ゆるむ顔をグッと抑えこんだ。

30 大倉side→←28

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す