let me fly

20 tj ページ20

「タジ〜おいで〜」





tj「お願いします」



「なんか変な感じ

　タジにメイクするの」




tj「ほんとですか？

　俺はめっちゃ嬉しい



　Aさんに

　メイクしてもらうのが夢だったから」



「わたしもね、

　タジに色のせてみたかったんだよね、実は。


　今回の曲って
　今までのタジの雰囲気と違うから

　真っ白なタジにするのワクワクする」



いつもより機嫌が良さそうに
ニコニコとメイクを始めてくれる




「いつかの放送のナイトルーティンも見たよ
　
　私が教えたスキンケアを
　ちゃんとやってくれてて

　嬉しかった〜」





ちょっとしたことを覚えてくれてる

Aさんの良いところ




弱い自分をさらけ出せたから
距離が縮まったように感じたのと



今日が終われば

またAさんに会えない日々が来る不安








tj「Aさん…

　11人に選ばれたら

　俺の願いひとつ、聞いてもらえませんか」



俺の言葉にAさんは
返事をするわけでもなく



ただ微笑んだだけだった








気づいたらファイナルの2時間が

終わってた





デビューが決まった


だけど、そこからはあまり覚えてない



放送が終わった後も
メディアの取材が立て込んでて



テレビ局のカメラが回る前に




Aさんがメイク直しをしに
ピラミッドに登ってきた



みんなに祝福の声をかけながら



「タジも、おめでとう

　ようやっと夢が叶うね」





tj「Aさん」


俺のいつもと違う雰囲気に気づいたのか
　



「タジ、メディアがいるから」



離れようとするAさんの手を咄嗟に掴む



「タジ、離して」


一段下で目を見開く洸人くんと

一段上から俺の名前を呼ぶ柾哉くんの声で


我に返って



手は離れた

21 tj→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す