9話 ページ10
私は班長が苦手だ。
男性にしては長めのまとまった紫がかった黒髪も、肌トラブルとは一生無縁そうな滑らかな肌も、長い睫毛に縁取られた宇宙を閉じ込めたような瞳も、サクランボの砂糖漬けのように赤く艶やかで形のいい唇も彼を形成する何もかもが苦手だ。
彼の身体的な唯一の欠点をあげれば私と同じ身長だということ、彼は男性にしてはやや小柄の部類に入る。しかしその欠点すらも彼はハニートラップを仕掛ける際には武器に変えてしまう。
彼はそんな私の思いに気づいていないだろう、私の目の前でホワイトボードにペンで達筆な字で何かを書いている。苦手な彼と狭い部屋に二人っきり、私の気が狂ってしまいそうだ。
突然彼が手を止めて私に話しかけてきた、彼の瞳に私が映る。やめて、その瞳に私を写さないで、それに吸い込まれてしまいそうになる。
「新入り、お前なんでこの会社に入った。いくら綺麗でも演技が壊滅的に出来てないお前にこの会社は向いてない。」
なんでと理由を聞かれてもすぐには答えられない、ふさわしい理由を用意してないからだ。そんな私を見つめたまま彼は続ける。
「あいつらのうち誰かが好きで入ったのならお前は大馬鹿者だ、お遊びで出来るほどこの仕事は生ぬるくねぇよ。」
あいつらとは会社の中心を担っているあの人たちのことを指すのだろう、嘘も演技も出来ない私の顔に動揺が現れる。
「グルッペンはオレの獲物だ、あいつに手出しすることは許さない。」
それを見た彼はやっぱりかと呟くと、目線を床に落とした私の顎を掴んで強制的に目を合わせて獣の唸り声のように低い声で警告してきた。
動作は少女漫画ならヒロインがキュンとするところだろうが、私はそうはならなかった、嫌っと叫び慌ててその手を振り払う。
「この仕事辞めたくないなら死に物狂いで演技力磨きやがれ。」
振り払れた手で彼は耳に髪をかけると部屋から出ていった、私は狭い部屋に一人だけ残された。
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uzumeyuki(プロフ) - てくさん» ご指摘ありがとうございます。外すのを忘れていました。 (2017年7月22日 22時) (
レス) id: a0e3f7861e (このIDを非表示/違反報告)
てく - 違反になりますので、オリジナルフラグを外していただけませんか？ 作品作成のルール・注意点・ガイドラインにも載っていますのでおめ通しください (2017年7月22日 21時) (レス) id: 42191458d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：uzumeyuki | 作成日時：2017年7月22日 14時
