青い夏序章 (ページ7)

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そんなに驚くことだろうか

いや、驚くことか
家族だと言うのに、兄弟だと言うのに、一度も会ったことがないのはおそらく"普通"ではない

「濱ちゃん、うるさいわ
声中まで聞こえたで」

声がした方に顔を向けると、長身の男性がスウェット姿で立っていた

左手を服の中に入れお腹を掻きながら、右手で頭を掻きそれはそれはだるそうな顔でこちらを見る男性を見た時、呼吸が止まった

その男性は、名前など言わずともわかる。
私の兄、藤井流星だ。
だって、こんなにも、こんなにも、

父に似ているのだから

苦しい
呼吸がうまくできない
息の仕方さえも忘れる
吸って吐くというやり慣れた行為が、まるで地上に釣り上げられた魚のように、うまくできない

ついには立っていられなくなり、その場に倒れこむ

「Aちゃん？！」

私を呼ぶ濱ちゃんの声と、焦った顔でこちらを見つめただ佇む兄を記憶し、そのまま意識を手放した

目がさめると木目調の天井
一瞬戸惑ったがすぐに自分が倒れ、家の中に運び込まれたことを理解した

しばらく天井を見つめていると、木目が人の顔に見えてきた

それが怖くなり視線を横にずらすと、壁にもたれ寝息を立てる長身が目に入った

立ちながら寝るとか、この人は器用すぎやしないか

自分の兄ながら謎に感心してしまった

「目、覚めた？」

ふと声が聞こえた方を見ると、優しい笑顔の濱ちゃんが座っていた

彼もまた眠っていたのだろう
目が少し充血している

「はい、ごめんなさい…」

初対面だというのに迷惑をかけすぎてしまった

謝る私を見つめ、「起き上がれる？」と声をかけた濱ちゃんに頷き、起き上がろうとする私の背中を、細いがしっかりと筋肉がついた腕で支えてくれた

「謝ることないで、この島の人たちはみんな家族や、困ったときは助け合う、それが島の生き方やから」

家族…

久しく聞いていない言葉だった

では、この島の人たちは濱ちゃんのように皆優しいのか
優しく微笑む濱ちゃんの顔を見てスッと何かが軽くなる感覚がした