青い夏序章 (ページ6)

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しばらく歩き、何度か小道を通り過ぎれば、少し高い位置にある2軒の家が見えた

「この右側の家が東雲のおばあちゃんち、つまりAちゃんの家やな」

久しぶりに呼ばれた名前に少々違和感を覚えつつ、私は目の前にある家を眺めた

決して小さくなく、大きいわけでもない
普通の、一般的な民家がそこにはあった

一度この島にはきたことがある。
6歳の時
たった1日だけだったが母と2人で

当然その時のことはよく覚えているが、
家を見てもあまりしっくりこなかった

そんなことを言えば、この島に降り立った時も懐かしいともなんとも思わなかったのだが

ふと視線を移せば、祖母の名前の下に"藤井流星"と書いてある表札が目に入った

そうだ、忘れていた

この家には"彼"がいたことを

彼、藤井流星は私の兄だ

兄といってもあったことはないし、名前しか知らない

6歳の時この島に来た私を、避けてなのかそうでないのかはわからないが、兄は一度も顔を見せなかった。

いや、母は兄に会うために島を一周したと言っていたか

「そうか、Aちゃんって流星の妹なんやな」

すぐ隣で濱ちゃんの声が聞こえたため、少しびっくりして後ずさってしまった

そんな私には気付かず、濱ちゃんは喋り続ける

「流星はな、この島一のイケメンなんやで！Aちゃんもかわええ顔しとるし、おとんとおかん美形やったんやな！」

自分のことを可愛い、などとは思ったことはないが
たしかに父と母は美形だった

若い頃はお互いモテ、付き合うまでに非常に時間がかかったと何度か話してくれた

私はそんな2人が自慢だったし、そんな2人に似ていると言われることが何よりも嬉しかったのだ

「会って、みたいです」

私がそう言うと濱ちゃんは驚いた顔をしてこちらを向いた

「え？！会ったことないん？！
たしかに別々に暮らしとるから会ったことないのも納得はできるけど、もしかして顔も見たことないなんて言わへんよな？」

「残念ながら、ないです」

素直にそう伝えると「えーーーー？！」とまあそれは大きな声で濱ちゃんは驚くのだった