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一通り話し終えると、「はぁーー」と大きなため息が聞こえた

その主を見ると、彼はこちらを向き
私の頭に手を伸ばした

頰に添えられていたともくんの手はいつのまにか離れており、私に伝わる温もりは、流星のものだけだった

「お前さ、無理しすぎやろ」

彼から発っせられた言葉に戸惑う


「なんで誰にも相談せえへんねん
苦しかったんやろ?辛かったんやろ?俺やばあちゃんに言えんかったのはもうわかった
せやけど、神ちゃんはお前の友達やったんやろ?
なんで言わへんねん
なんで、全部1人で抱え込んでんねん」


兄の瞳は潤んでいた
顔はひどく辛そうで
きっと優しい彼は
東京で独りでいる妹を何度も想像しただろう

そして、今のように顔を歪め
布団に潜って考えるのだ
どうすれば妹を救えるのか、と

「お兄ちゃん…」

ふと口から出た言葉は
昨日から幾度となく呼んでいる名前ではなく
聞きなれない、言い慣れない
彼のもう1つの呼び名だった


「なあ、A
お前は独りなんかとちゃう
俺がおる
ばあちゃんがおる
神ちゃんも、濱ちゃんも、照史も淳太もしげもおる
お前にとって昨日まで遠かったこの地には
お前のこと知らんでも心配して考えてくれる奴がおった
俺の代わりに、お前の代わりに涙流してくれる奴がおった
なあ、それでもお前は独りだって言うんか?
もう誰もいないって、思うんか?」


思わない
昨日この島に降り立ち、それから約1日を過ごして
もう伝わっていた
私には、私を想ってくれる人たちがいる
きっと今も家にいるであろうあの3人も
私がどういう気持ちでこの島に来たのか知っている
おばあちゃんも、私がどうして謝り続けているのか知っている

ともくんも
なぜ私が笑えなくなったのか
ともくんの名前を呼ぶことを躊躇ったのか
気付いている

今朝会ったしげという青年だって
私がどうして涙を流したのか
きっと知っているんだ


「ごめん」

「俺は謝って欲しいとちゃうぞ」

分かっている
言わなければいけない言葉は1つしかない

「…あ、りが、とう」

私がそう言えば、流星はずっと瞳に溜まっていた涙を流した

ともくんも、隣で笑い泣きしている


ああ、暖かい
私には、私のために涙を流してくれる人が
まだ沢山いたのだ

昨日までは知らなかった
それでも今はたしかに
私の心で大きな存在になっているのだ


ずっと独りだと思っていた
ずっと誰もいないと思っていた

こんな遠く離れた地に
こんな狭い空間に


こんなにも暖かい人たちが沢山いたのだ

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設定タグ:ジャニーズWEST , 重岡大毅 , 小瀧望   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2018年10月7日 2時

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