青い夏序章 (ページ49)

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「しばらくは大会にも顔出さんでな、せやけど、ダンスできなくなったからって嫌いになったわけちゃうやん
せやから連絡しまくって、大会だけには顔出すように頼んだんよ」

私がダンスを辞めてから、1年は大会に行くことさえ億劫になってしまった
自分がもう立てないステージに立ち、キラキラ輝いている姿など、見ることはできなかった

そんな時、いつも連絡をくれて
大会に来いと言ってくれたのはともくんだった
それでも嫌だ嫌だと断り続ける私に
「ダンスは見んでええ、せやから俺に会いに来てや」
そう言ってくれたのだ

ともくんに会いに行く
私はそのために一年ぶりに大会の会場へ向かった

それでも、嫌でも目に入ってしまうのはキラキラしたステージで
そこで自由に舞うかつての仲間たちは歓声や拍手を受けて楽しそうに踊るのだ

それなのに、私の心はワクワクしていた
やはりダンスは素晴らしい

大会終わりロビーに出ると、緑の衣装に身を包んだともくんがキョロキョロと慌ただしく頭を動かしていた

「ともくん」と声をかければ
彼は満面の笑みで近づき、私を精一杯に抱きしめて「ありがとう」と囁いた

ありがとうはこっちのセリフだ、と思いながらも
私はその言葉に頷くことしかできなかったわけで

それからも毎年"ともくんに会うために"大会に顔を出していた

だが、両親が亡くなってからはそれもなくなり
結局ともくんに会わないまま2年の月日が過ぎていた

「そっか、そりゃ来れへんよな」

私が大会に行かなくなってから、またともくんから連絡が立て続けに入るようになった

でも、私はそれを見ないふりして
携帯の電源を落としてしまったのだ

しばらく返事を返さなければ、ともくんからの連絡はパタリと来なくなり

ただ、大会のある日にだけは毎回「おいで」とだけ連絡をくれていた

「ごめんね、行けなくて」

私がそう言うと
ともくんは俯いた私の顔を両手で挟み、ぐいっと自分と目が合うようにさせた

「ほんまやで！俺寂しかったんやからな！
急に大会に来なくなるし、連絡も返って来おへんし！
せやけど、許したる
またこうやって会えたんやから
そんなこと許したるよ」

しっかりと私の目を捉えてそう告げるともくんは、すっかり笑えなくなった私に気付いているようで

そして、私のごめんの中に他の意味が込められていることも察し、全てを許してくれた

一番の友達であったともくんに、母と父が亡くなったことを告げずにいて
ごめんね