青い夏序章 (ページ44)

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「ええねん！漁師に曜日は関係あれへんから！な、濱ちゃん！」

あっくんは漁師なのか
それなら今日は仕事なのではないか

「俺は土日休みやから曜日の感覚はしっかりしてんで」

「なんや！裏切るんか！」

「なんでそうなんねん！」

そうか、確かに漁師や操縦士さんはほぼ毎日仕事があるはず
それならばこの日は休み、と決められていてもおかしくはない
私の予想は当たっているようで

「うちはシフト制やから休みの日と出る日は覚えとっても曜日は関係ないねん！せやから仕方ないやろ！」

まさかこの島でシフト制、なんて言葉を聞くとは思わなかったが、今日はあっくんは休みの日らしい
でも、濱ちゃんはそうじゃないはず

「てか濱ちゃん、なんでおるん？
今日木曜やで」

流星がそういえば

「淳太が帰って来たから親父に任せて来たんや！」

と、右手でピースを作りニカッと笑った

「親父さんに後で叱られんで」

淳太さんにそう言われ、濱ちゃんは少し肩を落とした
肩、ないな…

「濱ちゃん、ない肩落としても意味ないで」

「うっさいねん照史！」

昨日のようなまたわけのわからない言い合いが始まってしまった

その光景を淳太くん、流星は呆れたように眺める

この島にいたら、飽きることはなさそうだ

そんなやりとりをしばらく見つめていると
いつのまにか流星が後ろに立っていた

「ほれ、そろそろ行くで」

「え、どこに？」

私がそう聞けばしゃがんで目線を合わせてくる

「昨日言ったやろ、島案内するって」

そういえば昨日そんな話をした
まさか本当に案内してくれるとは思わなかったが
私はその言葉に頷き、流星に手を取られ立ち上がった

まだ言い合いをしている2人を横目に
ドアまで歩く

ふと振り返れば淳太くんと目が合う

口パクで「行ってらっしゃい」と送り出してくれたので、私も口パクで「行ってきます」と伝え
すでに外に出てしまった流星を追い、私も靴を履き外へと出る

すっかり陽も昇りきり、あたりは暖かい日差しに照らされていた

前を見れば、海がさっきとは比にならないほどに輝きを増しており、つい見とれてしまった

「お前のその靴じゃ滑るから、おかんの靴借りてき
靴箱に入ってるはずやから」

そう流星に言われ、一度出た玄関に戻り靴箱を開ける

見たことはないはずなのに、すぐに母の靴を見つけ
それに履き替えた

たしかに、この靴にも滑り止めが付いているようだった

母の靴はピタリと私の足にはまった
私は、もう一度外へ踏み出した