青い夏序章 (ページ32)

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「そう
あの日、4歳の時におかんが出て行ってから一度もあったことがなかった妹
6歳になったであろう妹に
俺は会われへんって思ったんや」

流星は俯く
私も、つられるように顔を下に向ける

「別に怒っとったわけちゃうねん
流石に五年も経てば怒りなんてないし、お前に対する嫉妬もなかった
せやけど、いざ会うってなると
なんも言われへんかった」

6歳の時この島に来た
その時に会うことができなかった兄
私は会ったこともない兄に苦手意識を抱き
それ以降話題の中に兄の名前を出さなくなった

「母さんが島に来た日
普段やったら船着き場まで迎えに行ってたんやけど、その時は淳太の家に引きこもっとった
ばあちゃんからも色々言われたんやけど、そんなん無視して朝早く淳太叩き起こして
ずっと相手してもらっとったんや」

会ったこともない淳太さんを不憫に思いつつ
私は流星の話に聞き入る

「夕方頃になって、おかんは息切らして淳太の家に来た
怒られるかなって思ってたんやけど
おかんは俺を抱きしめて、どこにおるかわからんから島一周してしまったわ！って
笑顔でそう言ったんよ
分かってたんやろな、俺が妹に会いたくないの
せやから、一言も責めんでずーっと抱きしめてくれてた
俺は、そんなおかんの優しさに涙が止まらへんくなって、後ろにいる照史や濱ちゃん、淳太に撫でられながら泣いとった」

きっと、流星よりも4つ上の兄たちは
母親が出て行き泣きわめく流星を見ていただろう
休みの日になれば現れる両親に、思いっきり笑い甘えていた流星を見ていただろう

本当の弟のように、本当の兄弟のように育った彼らは、母が帰ってくると言うのに逃げ出してきた流星を、それはそれは心配したのだろう