青い夏序章 (ページ4)

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「自分、この島に何しにきたん？」

私の背中をさすったまま彼は優しい声でそう聞いてきた

「今日からここに住むんです」

私がそう伝えれば彼はなにかを思い出すように空いてる右手を顎に当て空を見上げた

「んー？そんな話聞いたような聞いてないような…」

しばし彼はうーんと唸りながら記憶を探っているようだった

「あっ！」

すると突然大きな声を上げたかと思うと、私の背中をさする手を止め、自分の右手を左掌にポンっと置いた

「思い出したわ！東雲のおばあちゃんちの子やろ！」

東雲は母の旧姓だ

この島に住むのは母方の祖母で、生まれてから一度しか会ったことはないが

毎年誕生日になると少しばかりのお金をお祝いとして送ってきてくれ、わざわざ電話をかけて「おめでとう」と伝えてくれる優しい人だ

もちろん、15歳の誕生日には流石にお金は送ってこなかったけど、毎日のように電話をかけてくれるようになり元気な声を聞かせてくれていた

家でも外でも1人の私には、その優しさがあまりにも暖かすぎて祖母の声を聞けばいつだって心は抱きしめられたように落ち着いていたのだ

「なんやー！先に言うてえな！」

男性は少し膨れながらそう言った

「いや、聞かれなかったですし
わざわざ自己紹介するのもなんか…」

そんないきなり知らない人に
私、東雲の家に引っ越してきました
なんて言うわけがない

「あ、それもそうやんな」

少し冷たい言い方になってしまったと気にしていたが、彼は先ほどの優しい笑顔を向けてくれた

まるで、太陽のように暖かい、ぽかぽかした笑顔

お父さんもこんな風に笑ったな、と思い出し勝手に苦しんだ

その異変に気付いたのか、男性は少し心配そうに顔を覗き込んできた

知らない人に心配をかけるわけにはいかない
私は胸の痛みを隠し嘘の笑顔を貼り付けて彼に返した

瞬時に彼は戸惑うような顔をしたが、すぐに優しい笑顔に戻りまた背中をさすり始めた

「おれ、濱田崇裕ゆうねん！みんなからは濱ちゃんって呼ばれてるし、君もそう呼んでくれてええからな！」

さする手をそのままに彼は笑顔でそう言った

「あ、藤井Aです
濱ちゃん、なんて馴れ馴れしく呼んでもいいんでしょうか…」

私はそう言いながら何故か少し俯いてしまった

すると、下から彼の顔が覗き込んできた
それに少しびっくりしつつも彼を見つめ返すと

「その方がしっくりくんねん！」

と先ほど見たニッとした笑顔でそう言ってくれた