青い夏序章 (ページ29)

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食べ終わり、手を合わせると
祖母は嬉しそうに私の顔を見た

そうか、祖母が作ってくれたご飯を完食したのは初めてだ

決して祖母は料理が下手ではない
むしろ、うますぎる方だ

それでもすぐに満腹になってしまい、途中で箸を止める私を
祖母は言葉にせずとも寂しがっていたのかもしれない

そんな祖母を見つめ
「美味しかった」
そう告げれば

祖母は花が咲いたようにパッと素敵な笑顔になり
「ありがとう」と言ってくれた

暖かすぎるほどなこの空間に
私はすこし、むず痒くなるのだ

朝食を終え、祖母はすぐに片付けを始めた

手伝おうと台所へ向かうと
「流星、起こしてきてくれへん？」
と私を振り返り告げた

先ほどの祖母の話を聞いた感じ、兄を起こすには相当な気力が必要そうだ

私は頷き二階への階段を登る

兄の部屋の前に行き、先ほどと同じようにドアをノックする

もちろん反応はない

そーっと部屋のドアを開ける

奥のベットに大きい塊が１つ

布団の中に頭まで潜り眠っている兄だ

そんなに深く潜って息苦しくないのだろうか

そんなことを考えながら、先ほど祖母に頼まれたことを思い出す

ベッドの横に膝で立ち、すこし布団をめくればあちらを向いている兄の頭が出てくる

肩を突き声をかける

「流星、朝だよ
もうご飯できてるよ」

朝が弱いという流星が、こんな小さな声で起きるわけはないと思ったが
案外すんなりと流星は目を開け
こちらを反転し、顔を向けた

「起きとる」

いつからか分からないが、彼はすでに起きていたようだ

それならノックした時に何か言ってくれればいいのに

任務は果たした
私は立ち上がり自室に向かおうとすると
流星が私の手を引いた

立ち上がりかけていた私は体勢を崩し、そのまま流星のベットに倒れこむ

「いた…」

それはこちらのセリフだ
膝はマットレスの角にぶつけ、顔面からベットに突っ込んだのだから

「起きてるならそう言ってよ」

布団に埋もれた顔を上げ、兄を見つけそう告げる

「起きたけど
眠いから起きれへん」

そんなこと知ったことではない
自力で立ち上がってもらわねば困る
自分より背の高い男性を起き上がらせるなんて、お世辞にも逞しいとは言えないわたしには無理な行為だ