青い夏序章 (ページ26)

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それからどれくらい経っただろう

もう陽は完全に昇り
私たちを眩しく照らしていた

さっき彼に掴まれた右腕は離され
今は逆の左手を握られている

なぜ彼が手を繋いできたのか

そんなことは分からなかったが
たしかに感じる彼の温もりに、私は安心していたのだ

そして彼もまた、私から伝わる温もりに
安心を求めていたのかもしれない

私たちは独りじゃない

それを確かめ合うように
強く手を握りしめていた

彼になにがあったのかは知らない
でも、きっと彼は
自分と同じような瞳をした少女を放っては置けなかったのだろう

気付いた時には声をかけ、隣に座り、手を握りしめていた

ただそれだけだ
ただそれだけのことで
それ以上でもそれ以下でもない

2人でただ黙って
無言で海を眺める

ふと、誰かの気配を感じた

それは彼も同じだったようで
一度私たちは目を合わせ、ゆっくりと振り返った

「探したで」

後ろには私の兄、流星がいた

兄は私たちの顔を見つめ
ゆっくりと近づいてきた

「流星…？」

隣に座る彼が兄の名前を呼ぶ

すると兄は右側の口角をあげ
スッと目を細め、彼の顔を見つめた

「しげ、おはよう」

しげと呼ばれた彼は立ち上がり、防波堤を降り流星の元へと歩いて行く

私もその後を追うようについていった

「おう、流星」

「ずいぶんと早起きやな」

「流星も、こんな時間に起きとるの珍しいやん」

「やかましいわw」

淡々と繰り広げられる会話に、私は兄と彼を交互に見つめることしかできなかった

そんな私に気が付いたのか
流星がいきなり私の腕を引き
自分の隣に引き寄せた

「こいつ、藤井A
ずっと東京におった俺の妹
よろしくな」

私の代わりに紹介してくれる兄
いや、できれば自分でしたかったのだが

「東京…」

その言葉を聞くと、彼は少し顔を曇らせたようだった

「しげ」

兄に呼ばれ段々と俯いていく頭を少し持ち上げた

「大丈夫やから」

そう兄が言うと、彼はハッとしたように顔を上げた

「こいつ、重岡大毅
お前と同い年」

兄は20cm下にいる私を見て、勝手に彼の名前を告げた

「あ、うん
よろしく」

兄から視線を移し、重岡くんを見る
彼も私を見つめており、また目が合う

「おん、よろしく」

彼は冷たい声でそう言い放った

さっき笑っていた彼とは、まるで別人のように