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私と同じ、冷たい瞳
その瞳に吸い込まれるかのように、私は目が離せなくなってしまった


「何で泣いてるん?って、聞いてるんやけど」


何も言わない私に痺れを切らしたのか、彼は少し強い口調で、先ほどの質問を繰り返した


「あ、えっと…
海が、空が、あまりにも綺麗で
綺麗すぎて
たぶん、それで」


彼から目をそらしそう伝えた

私にも、なぜ涙が出たのかわからなかった


両親が目の前で亡くなったあの時も、2人の死に顔を見た時も、お葬式で2人を送り出した時も
一切流れることのなかった涙が

なぜこの海と空には引き出せたのだろう


自分自身が、不思議でならなかった


「ふーん」

隣の彼は、心底興味がないという返事をした

自分から聞いてきたのに、なんて失礼なやつだ

そんなことを思いながら、もう一度海を見つめる


気付くと彼は、わたしの横に腰掛けていた

しばらく続く沈黙

もしかしたら彼は、1人になりたいのかもしれない

そう思い立ち上がろうと手をついた時だった

「俺も、この海を見ると泣きそうになんねん」


彼が口を開いた

「あなたも?
ここに住んでいるんじゃないの?」

ここに住んでいるのなら、いやでも毎日見ることになるだろう
そんな見慣れた風景で、泣きそうになるなんて
都会から逃げてきた私には、あまりわからなかったのだ


「そうやけど、
なんでやろ
なんとも思わない時もあんねん
せやけど、泣きたくてしょうがなくなる時もある」


「変やろ?」と言ってこちらを向いた彼は、初めて笑顔を見せてくれた


左頬に、特徴的な三日月のエクボをつけて


でも、その笑顔はどことなく寂しそうで
私は、胸が締め付けられるばかりだった


気付けば私は、そんな彼の左頬のエクボに人差し指を突き当てていた

彼は驚いた顔をする

もちろん、それは私も一緒で


「あっ、ごめん
無意識」


彼の左頬から指を離そうとした時、彼の腕が私の腕を掴んだ


しばし視線が交差する


「窪みやないからな」


「へ?」

そんなことをいきなり言うもんだから、間抜けな声が出てしまった

フハッと彼が笑うと、触れた指先の頰が、窪んだ


「窪みじゃん…」


「エクボや、アホ」

初対面にアホ呼ばわりとは
やはり彼は随分と失礼なやつだ

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設定タグ:ジャニーズWEST , 重岡大毅 , 小瀧望   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2018年10月7日 2時

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