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目の前に広がる海に、私はただただ息を飲んだ
やはり、私の考えは間違っていなかった
先ほど遠くから見た海は、近くで見ると何倍も綺麗で、それはもう、言葉にできないほどだった
昨日は船酔いで、船から外を見ている余裕なんてなかったし
船から降りてもずっと気分が悪く、濱ちゃんの声に耳を傾けることに必死だったから
全く目に入っていなかった海が
いま、私の視界を埋め尽くしている
まるで、海以外見るなと言われているような
そんな感覚に陥ってしまう
もっと近くで見たい
そう思った私は防波堤に登り、そこに腰かけた
海は青すぎるほど青く、
いつの間にか陽が昇った空を映し出していた
ふと、空を見上げる
これもまた声が出ないほどに綺麗な空で
雲もなく、ただ青い空間が永遠と広がっているだけ
東京にいるときは空など見たことがなかった
あの事故の後は、尚更
空とはこんなに綺麗だったか
こんなにも広いものだったか
まるで自分自身なんてちっぽけに感じるほど、目の前に広がる海も、空も、青かった
気付けば、頰に生暖かい感触
あの日からずっと流れることのなかった涙が
たった一粒だけこぼれ落ちた
「何で泣いてるん?」
空と海に夢中だった私は全く気付かなかった
隣に男の子が立っていることに
見上げても、顔は見えない
太陽の光が涙に反射し
私の視界は光でいっぱいだったからだ
そのことに気付いたのかどうかはわからないが、男の子はしゃがみ、私と同じ目線になった
その男の子の瞳は
まるで自分を見ているかのように
私と同じ、冷たい瞳をしていた
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作者名:民 | 作成日時:2018年10月7日 2時