青い夏序章 (ページ21)

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「あ…ごめんなさい…」
すぐ謝るのは私の癖だ

いつからこの癖がついたかはわからない

両親がいなくなってからか、はたまたそれよりずっと前だったか

「いや！謝らんでええねん！
別に嫌とかそんなんじゃないし、むしろこっちからそう呼んでくれ！って頼んでるんやから、それでええんやけど
なんかほら、こう呼んでって言われてもなかなか呼べへん時ってあるやんか？
俺なんか特にそういうタイプなんやけど
せやから、Aちゃんすごいなーって思ったんよ」

確かに私は、昔から人のことをすぐあだ名で呼んでしまう人間だった
年上の人には一応最初は躊躇うが、結局のところ呼びやすい、と言う理由だけであだ名で呼んでしまう

濱ちゃんの時もそうだ
年上で、しかも初対面の人間をそんなに馴れ馴れしく呼べない、と思っていたのは事実だけれど
濱田さん、と呼ぶよりも
濱ちゃんの方が好きだ
濱ちゃんというあだ名は、彼にぴったりだから

「すごくはないですよ
昔からなんです
呼びやすい方を選んでしまうの」

「そうなんやー」

彼はふわふわと笑い、また縁側に腰かけ、残った酒を一気に飲むと「ほんじゃ、また明日な！」と私とあっくんに手を振り帰ってしまった

なんだか、不思議な人だ

そんなやりとりを見ていたあっくんは

「ええと思う！あだ名ってええよな！まあ呼びやすいってのもあるけど、仲が深まるっちゅーか！」

確かに、そうだ

昨日まで苗字で呼んでいた相手をあだ名や名前で呼ぶようになった瞬間に、グッと距離が縮まる気がする

まあ、東京にあだ名で呼べるほど仲のいい人はいなかったけれど

たった1人、あだ名で呼んで振り返ってくれる人がいた

彼は年に何度か東京へ来る

どこに住んでいるのかは知らないが、また彼も独特なイントネーションで喋る笑顔が素敵な人だった

今の今まで思い出すこともなかったが、少し思い出せば会いたい気持ちが募ってしまう

彼は今、どこで何をしているのだろう

まだ、大好きなダンスは続けているだろうか

最後にあったのは2年前

あの事故が起きる半年ほど前だった

あの時はしっかりと笑えていた私を、今彼が見たらどんな顔をするのだろう

想像しただけでチクリと胸が痛んだ