青い夏序章 (ページ3)

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ふと、頭の片側がズキッと痛む感覚に襲われた

思い出すにはまだ少し早かったみたいだ

「お客さん、着いたで」

おそらく船頭さんだろう
ふと顔を上げると細身の男性が座る私を見下ろすように立っていた

「あ、すみません」

軽く会釈をして立ち上がると、少しフラついた

そこから一気に襲ってくる胸のムカつき

どうやら船酔いしたようだった

「おっと、大丈夫か？」

独特なイントネーションで男の人が声をかけてくる

「船酔いしたんかな？船はすぐ出るから少し外で休もか」

男性は優しく笑い、「ごめんな」と呟き私の手を躊躇いがちに握り、船の外へ連れ出してくれた

一歩船から出て歩き出せば、平均感覚がおかしくなっているようでまた少しフラついた

それに気付いた前の男性は振り向き、優しい笑顔で船着き場のベンチまでゆっくり歩いてくれた

ベンチに座れば手を離され、代わりにその左手で私の背中をさすり始めた

「船酔い、辛いやんなあ？
俺も最初はよう慣れんで吐いてばっかりやったわ」

隣の男性はそう言うとフハハッと少し笑った

「今は？」

少し彼の顔を覗き込んでそう聞くと

「今は毎日乗ってるからな！むしろ地上の方がこけそうやわ！」

と言いながらニッと笑い、右手のピースを顔の横に持ってきた

その笑顔につられるように私も少し口角を上げる

意識せずに自然と笑うことができたのは、ずいぶんと久しぶりだった