青い夏序章 (ページ20)

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私をよそに、2人は意味のわからない言い合いを続けている

内容はさほど重大ではなさそうだ

そんなことより、まだ桐山さんをなんと呼ぶか決めていない。

先ほど名前で呼んで欲しいと言われた、気がする

「照史くん」

「えっ？」

彼が言い合いをやめこちらを向く
目を見開き少しびっくりしているようだ

「あっくん」

「え、え、あ、はい？」

「照史」

「え、Aちゃん？どうしたん？」

私が彼のあだ名を連呼していると、心底心配そうな顔をして濱ちゃんが問いかけてきた

「どれがしっくり来ました？」

「ふぇっ？あ、俺？」

私の急な問いかけに一瞬たじろぐ彼
その後すぐに考える姿勢になり、うーんと唸った後

「あっくん、かなあ」

と呟いた

決まった
彼は、桐山さんは、今この時からあっくんだ

「じゃあ、あっくんで」

「お、おん？」

わけがわからないといった様子で首を傾げるあっくん
私は彼の呼び名が定着し、少々満足していた

馴れ馴れしい、よく言えば人懐っこい彼を桐山さん、と呼ぶのは実は抵抗があったのだ

彼のキラキラな笑顔は、桐山さん、ではなく
あっくんそのものだからだ

少し子供っぽい、それでいてとても綺麗な彼は、やはりあっくんがしっくりくる

「Aちゃんって、抵抗ないんやな」

「え？」

突然の濱ちゃんの言葉に私は勢いよく振り返った

勢いが良すぎて視線は濱ちゃんではなくあっくんに向いてしまったのだが、
すぐに濱ちゃんに視線を移す

「何が、ですか？」

「ん？呼び名」

呼び名、確かに私は彼らの呼び方をすんなりと受け入れすぎてやいないか

仮にも年上だ
確か、23歳と言っていた

濱ちゃんは優しく距離を詰めてくれる
あっくんは強引ながらも人の懐に入り込むのがとてもうまい

そして、流星も兄とは言えど、年上だ
しかも、生まれてから一度もあったことがない
つまり初対面の彼らに対して、私はあっくん以上に馴れ馴れしいのかもしれない