青い夏序章 (ページ17)

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人の作ったご飯を食べるのはいつぶりだろうか

最後に食べた母の料理はなんだったか
思い出そうとしてもなかなか思い出せない

なんせ、普段からコンビニ弁当や即席ラーメン、スーパーのお惣菜が普通だったから、母の手料理を食べたのが遠い昔に感じる

お鍋は温かかった
自然と体と心がぽかぽかとしてくる

周りを見ると、みんな笑顔でご飯を食べている

こんなに賑やかな食卓は久しぶりだった

なんだか、喉が詰まる

でも、涙は出ない

温かいものを食べても、私は冷たいままだ

また勝手に落ち込みながら、楽しそうなみんなを眺めていた

ふと前を見れば桐山さんと目が合い、どうしたん？と聞くように首を傾げてきた

私は、なんでも無いですよ、という意を込めて首を横に振った

「あ！Aちゃん全然食べてへんやん！ほれ！よそったるから器貸しい！」

斜め前からそんな声が聞こえたかと思うと、すでに目の前にあった器は濱ちゃんの手の中にあった

「こら、崇裕くん、Aは昔から少食やねん
あんま無理して食べさせんでええから」

「あ、そやったん？なんや遠慮してるん思っとったわあ
俺らの周り昔から女の子がおらんから、みんなガツガツよう食べるんよ
堪忍なあ」

おばあちゃんが濱ちゃんに一喝すれば、濱ちゃんはそう言い頭を掻きながらぺこりとしてきた

「あ、いえ、ごめんなさい
気を遣わせてしまって…」

それにしても驚いた
おばあちゃん、覚えていたのか
確かに私は昔から少食だし、学校の給食も、お母さんのお弁当も、よく残していた
6歳の時、おばあちゃんが作ってくれたカレーも半分以上残してしまった

おばあちゃんも母も一切怒りはしなかったが、私はごめんなさいと謝りながらずっと泣いてたっけ

10年前のことなのに、よく覚えている

あの時のカレーの味も、おばあちゃんが撫でてくれた手の温もりも、母が楽しそうに笑う姿も

この島に来てから思い出すことは両親のことばかり

でも、辛い思い出じゃ無い

3人で楽しく笑いあったあの幸せな日々だった

東京にいる時は事故のことやその後の両親の死に顔しか思い出せず、暗い部屋で毎日座り込んでいることしかできなかった

不思議だ
この島は、本当に