青い夏序章 (ページ16)

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ドタドタと階段を駆け上がる音で目を覚ました

さほど時間は経っていないようだ

外はすっかり暗くなっていたが、まだ夕日が頭をのぞかせている

ガラッとドアが開くと、桐山さんが笑顔で立っていた

せめて、部屋のドアはノックしてくれ、と心の中で呟き「ご飯ですか？」と桐山さんに聞いた

「せやで！みんな待っとるから早よ食べようや！」

桐山さんが大きな足音を鳴らしながら私の方に近づいてきて、私の手を取り一階へ

居間に行くともうみんな食卓についていた

いや、祖母だけはまだ慌ただしく動き回っていたが

「あ、東雲のばあちゃん！Aちゃんきたで！もう座りや！」

「もうばあちゃん、何しとるん？
そんな張り切らんでもこれから毎日Aはおるんやで？
毎日飯前に運動するつもりか？」

「やって！久しぶりにAとご飯食べられるんやで！10年ぶりや！10年ぶり！」

よく聞く、長期休みにおばあちゃんの家に行くとご飯前張り切りすぎて動き回るとはこのことか

私は初めてみた"普通"の風景に、少しだけ口角が上がる感覚があった

隣に立っていた桐山さんが顔を覗き込んでくる

「なんや、笑えるやん」

「え」

もしかして、桐山さんにもばれていたのだろうか

なんだか、この島の人たちは鋭くて、本当に隠し事はできないな、と実感した

「ほら、突っ立っとらんで座りや！Aちゃんは流星の隣な！」

そう言う濱ちゃんの方を見れば、
隣に立っていたはずの桐山さんはすでに着席し、箸を持ってはよ！はよ！と目で訴えかけてくる

食べることが好きなのだろうか
確かに、少し大きい

決して太っているわけでは無いと思うが、濱ちゃんが痩せすぎているせいか桐山さんが大きく見える

「A、はよ」

流星が自分の隣に敷かれた座布団をポンポンしながら呼んでいる

やっと私が着席すると台所にいたおばあちゃんは慌てて食卓に座り
おばあちゃんの「いただきます」の後に3人が大きな声で「いただきます！」と言った
そんな3人に圧倒されながら私は小さく呟き、すでにみんなが食べ始めているお鍋に箸を伸ばした