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「おい照史ー!きたんなら手伝えやー!」


一階から濱ちゃんの大きな声が聞こえると、私の頰から手を離して「はーい!」と大きな返事をすれば、桐山さんはそのまま一階まで降りて行ってしまった


なんだか、台風みたいな人だな


「大丈夫か?」

流星が上から見下ろし声をかけてくる


「ん?」

なんとなくそう聞いてみれば、しゃがんでもう一度、「大丈夫か?」と優しく問いかけてくる

私は静かに頷き、窓の外のすっかり茜色に染まった空を見上げた

流星の問いかけは、消して桐山さんのことに対してではない


この部屋で、大丈夫か?と言う意味だ

母がいたこの部屋で
母の匂いが染み付いたこの部屋で
そんなとこで過ごして大丈夫か?
という問いかけだ


分かっていたけど、分からないふりをした


大丈夫、ではない
もともと2人から逃げるためにここに来たのだ
それが、結局2人の記憶をより濃くさせるだけだなんて、誰が知っていただろう


でも、私は忘れてはいけない
2人のことを
2人の死を
あの瞳を


私は、全てこれからも持ち続けなければいけないのだ


「ええ匂いしてきたな」


いつの間にか隣で寝転んでいた流星が呟いた

確かに、気がつくと母の匂いは薄くなり、一階からお鍋のいい匂いが漂ってきた


目を閉じる


まぶたの向こうで茜色の空が輝いている

それが、瞳に焼きついたように


目を閉じても広がる世界は
赤かった


「明日暇か?」

「え?」


突然の問いかけに驚きつつ、私は流星の方を見た


「島、案内したるわ」

流星は天井の木目を見つめながら続けた


「この島、ほんまにええとこやから
お前も気にいると思うわ」


そう言うと流星は「よいしょっ」と言って立ち上がり、そのまま自室へ戻ってしまった


この島のこと、知りたい


島に来た時濱ちゃんが話してくれたこの島のこと

ピンとは来なかったが知りたいと思った


お煎餅をくれるおじいさんにも、最近越してきた若い夫婦にも、優しすぎると話題な駐在さんにも、少し怖ズラなお医者様にも、会ってみたい


なぜこんなにもみんなが優しいのか
知りたい



この島に、ほんの数時間で私は取り憑かれたようだ

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設定タグ:ジャニーズWEST , 重岡大毅 , 小瀧望   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2018年10月7日 2時

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