青い夏序章 (ページ2)

今日:10 hit、昨日:12 hit、合計:162,580 hit

01 ページ2

電車と船で約5時間

揺れる船に胸のムカつきを必死に堪え着いたのは特に思い入れもない場所

中学を卒業し、東京で定時制の高校に進学したものの、あの家にいることが、あの場所に居続けることが苦になり祖母がいるこの島まで逃げてきた

あの事故が起きてからずっと祖母に来るよう言われ続けてきたが、その選択が両親を忘れることにならないかと怖くなり、一人で耐え抜いてきたがやはり無理だった

あの家には、2人の記憶が染み込んでいる

優しかった母と父は、1年半前にこの世を去った

不慮の事故だった

共働きで普段から忙しい父と母が久し振りに帰ってきた休みの日、私はわがままを言って親子3人でお出かけをした。

特に何もない、ただショッピングモールに行って買い物をしただけだ。

それだけでも、私は何年分の寂しさを忘れるほどに楽しかった

2人も笑顔で私の手を繋いでくれていた

そんな帰り道、信号無視の車が車線を超え私たち家族の車に正面からぶつかってきた。

一瞬だった

気付いた時には割れたフロントガラスが目の前で、後部座席に乗っていたはずの私には絶対に見えない風景が広がっていた

右を見れば父が、おそらく父がいた
左には母が

2人ともぐしゃぐしゃで、本当に父と母なのか一瞬で判断できなかった

でも、私の足にかばうように添えられた右から伸びる手は、少し黒いがっしりとした、たしかに父のもので

抱きしめるように肩にかかる左から伸びる腕は、白く細い母のものだった

何が起きたのか、私には分からなかった

いや、わかっていた

わかっていたから分からないふりをした

勝手に瞼が閉じていく感覚に、身を委ね

次に目を開ければそこは真っ白な天井で

あ、病院か
なんて冷静に思っていた

きっと、父と母はいない。
どこにも

あんなにも大好きな2人が亡くなったかもしれないというのに、私は意外にも冷静で

そうか、本当に受け入れたくないものは
すんなりと入ってきてしまうんだ、と

嫌な現実が胸につかえる感覚

中学3年の秋、
もうすぐ私の誕生日だった

私は、最も愛おしい2人を亡くした