君と最後の夏だった。【rtrt】 ページ1
『花火しよう!!』
「へ?」
いつも突拍子のないことを言う彼女は、またそんなふざけたことを言い出した。
『だから、花火しようって』
「いやそんなこと知ってるわ、ただ今の季節わかってる…?秋だよ…??」
『だからこそやるんでしょー!』
「……馬鹿でしょ」
『しーっ!!行くよ!!』
「えー…」
ほぼ無理やり引きずられるような形で連れて来られた。
相変わらず強引な彼女だ。
ま、そんなところも愛らしいけれど。
ふと、疑問に思った。
「…あれ、そういえばAちゃん、花火はあるん?」
『えへ、実はもう買ってるの』
そう言ってへら、と笑う彼女。
可愛らしさが溢れ出ている。
「いつの間に…」
『この前コンビニ行ったついでにね〜?』
用意周到なところは相変わらずだなぁ…なんて考えていたら、違和感がした。
なんでわざわざ別日に花火を買ったのか。
その日に買ったならその日にするでいいのに。
しかも今日当然無理やりつれて来られたし。
計画していたのか、それとも…。
いや、どちらにせよ。
「…何か、裏があるんか、?」
その瞬間、Aちゃんの肩がびくりと小さく揺れる。
「…Aちゃん?」
『…なあに?レトくん』
彼女の声が少し上擦った。
これは、何かあるな。
…多分、やけど。
「何か隠してない?」
『いや、何も隠してないよ』
『レトくん、急に連れて来られて混乱してるの?』
彼はいつものように笑うと、俺に背を向け、また口を開いた。
『さ、花火しよ?レトくん』
西日が彼女を照らした。
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作者名:ぽちむ | 作成日時:2021年10月24日 22時