友達以上 ページ8
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「プリン、食べるか？」
そして、そのときは突然やってきた。
居眠り授業となった私が目を覚ますと
いくつかのプリンが入った袋を持った侑がいた。
あまりに唐突すぎて、頭が追いつかない
こんなタイミングで話しかけられるなんて
誰が分かっただろうか
しかもよりによってプリンって
悪魔か、あんたは。
それでも目の前の彼は何も無かったかのように
私にプリンを差し出してくる。
そんなん、拒否権ないやんか
「ありがとう、食べていい？」
「食べんでどうすんねん」
何言っとるん、みたいな顔してきた侑。
こんなやり取りは久しぶりで笑いが溢れた。
そう言って貰ったプリンは
よく見るとこの前食べたプリンではなかった。
少しデザインの違う、
売店の中でも値段が高いプリンだ。
「侑の奢りなん？」
「宮侑様って言うたらタダでもええで」
「性格悪いわあんた」
「冗談や、冗談」
侑との会話が久々で緊張しているのか
無言の時間が妙に長く感じる。
二人で同じプリンを黙々と食べる光景は
きっと傍から見たらシュールだろう。
そんな中「なぁ雪原、」なんてよぶ声。
彼の方に、振り返る私。
なんだか、デジャヴだ
でも、振り返って見えたのは
侑の真剣そうな顔。
空気が変わった。
「なに、」
「すまんかった」
すまんかった
きっと彼は��あの事��について言っているのだろう
そんな謝罪にどう答えたらいいか分からず
思わず、口をつぐんでしまう。
治はこれを機に告ったらええ、なんて言うけど
無理や、私。
この距離を手放すほど、勇気はない
「もう前みたいに話せへんのかなって思っとった。でも私、ずっと侑の友達でおりたいから、」
必死に動かした口は途切れ途切れにも
音になっていった。
あくまでも、前みたいに
この距離を保ちたいという気持ち。
彼の反応を、答えを聞くのが怖くて
恐る恐る彼の方に顔を向ける。
「……当たり前やろ」
ピタリと合った目はじっと離さない。
そう返してくれた侑の言葉に安心した。
けど、その合間に、少しだけ、
悲しそうな顔をした。そんな気がした。
でも、機転を変えるように「それに、」と
彼はこちらに振り返った。
「友達いなくなってまうやろお前」
「治がおるわ」
「治しかおらへんやないか」
再び戻った空気感と、
彼との会話を嬉しく思いながらも
どこかで、
恋人に進める、だなんて
期待していた自分がいた。
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作者名：お箸 | 作成日時：2020年5月18日 19時
