逆転クオリア（短編集） (ページ33)

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『なぁAさん、ちょっと時間ある？』

福本くん、私の名前知ってるんや。

『...あれ、聞こえてへんかった？』

『え？あ、いや、はい』

『よかった！こっちきて！』

放課後人もまばらになった頃、
彼に連れてこられたのは空き教室。

『ごめん急に呼び出してめっちゃ怖いよな』

『あ、そうですね、正直...？』

『てか、なんで敬語なん？！クラスメイトやん』

『いや私なんぞがタメ口なんて、』

そう返したものの、
もーなにそれ！いやや！敬語やめて！
なんて頬を膨らませて言うもんだから
抗うことなんて出来るわけがなかった。

『それで福本くんどしたんでs、どうしたん？』

『あーえっとねぇ、えっと』

『うん』

なぜか少しモジモジしている様子。
イケメンは何しても絵になるなぁ、
なんて気楽なことを考えていた。

『俺と付き合ってくれへん？！』

『うん』

『...えっいいの？ほんまに？！』

『うん...うん？！』

耳を赤らめて少し上目遣いで
こちらを見つめる姿に
ぼーっと見とれていたら空返事をしてしまっていた。

『いや、ちょっとまって？！私に言ってる？』

『いややった...？』

いぬ...？
彼から〝垂れ下がった耳とシッポ〟が見えた。

...気がした。

『いやとかじゃないんやけど、』

『じゃあ付き合ってくれる？』

『論理の飛躍...！』

私も彼の間になんとも言えない空気が流れる。

『そうやんな、急にごめん、忘れて』

『...いやっ、あの、はい』

『えっ』

『私なんかでよければ...？』

『言ったで？！言質とったで！！やったーーー！！！！』

あまりにも眩しい笑顔に目が眩む。

自分でもなぜそう返事を返したのか分からない。
けど、これ断れる人間いるのかな...笑

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