逆転クオリア（短編集） (ページ3)

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イケメンで優しくて大人な彼は
悪いところなんてひとつもなくて。

いつでも悪いのは欲張ってしまう私の方。

ただ時折見せる切ない表情が
私ではダメだと言われている気がして
ひどく傷つくこともあった。

『この服どう？』

誠也『Aには大人っぽすぎひん？』

『...そんなことないもん』

妹さんですか？よくお似合いです！
なんて残酷な店員さんの声が聞こえた。

ほらもっと大人っぽくしないと彼女に見えないんだよ。

周りの声や態度が
どんどん心を蝕んでいく。

『仕事しんどいん？』

誠也『え？疲れた顔してる？』

『うん、ちょっと』

誠也『そっかでも大丈夫やで』

私には弱いところも見せて欲しいのに
あなたはいつも隠しちゃうよね。
そんなに頼りないかな？

水に垂らした絵の具のように
少しずつ、でも確実に
私の心に靄が広がっていった。

『好きやで誠也くん』

誠也『知ってるよ笑』

『...うん、私はいつも言うてるもんなぁ』

好きって言葉には
同じ温度の好きが欲しいよ。
じゃないと、...苦しいよ。

私たちの歯車は狂い始めたんじゃなくて
きっと最初から噛み合ってなかった。

私だけが必死に彼に追いつこうとしていた。

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