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その瞬間、グルッペンが勢いよく立ち上がり、俺の頭を容赦なく殴った。げんこつで。
「……い……い……痛ァ!!」
涙目で絶叫した俺に、グルッペンは拳を掲げたまま、わなわなとふるえながら、
「ふざっ……けるな。ここはホテルだ!!」
と怒鳴った。うお……本気で怒っていらっしゃる……。こいつ、恥ずかしくなりすぎると怒るタイプなのか……もしかして……。
はじめてみるグルッペンの本気の怒りに俺はちょっと興奮しつつ、やりすぎたことを反省もして、おとなしく座りなおした。
「……別に冗談じゃねーから」
俺がフォロー、あるいは牽制のつもりでそういうと、いまだに突っ立ったままのグルッペンがほんのわずかに身じろぐ。そうだ。俺は冗談とか、からかいのつもりでお前にこんなことをしているわけじゃない。俺の気持ちは、全部昨晩いった通りだ。
俺はお前が好きで、お前に触りたいと思う。
「…………」
俺のその告白を思い出してか、グルッペンはふたたび赤くなって、拳をよろよろと取り下げた。そうして、俺の隣に静かに座りなおす。
俺たちはふたたび、無言になってしばらくワークを解く。
「あ、やべ」
計算をミスったので、なんとかしようと手に取ろうとした消しゴムをつかみ損ねて地面に転がしてしまった。俺とグルッペンのちょうどあいだくらいに落ちたので、グルッペンが取ってくれるかなと一瞬期待したものの、とりあえず自分で取りに向かう。……だがその一瞬で、グルッペンは結局、反射的に消しゴムを取り上げようとして、俺と同じように地面にかがんでいて……、俺たちはごく至近距離で、同じ方向を向きながら、顔をつき合わせることになってしまった。
「…………」
しばらく無言で、ふたりとも呆然とする。こんな漫画みたいな展開、普通あると思わないだろ。俺がぼけっとしているあいだに、グルッペンの顔がどんどん赤くなる。あ、照れてる……そりゃそうだよな、俺だって自分の顔が赤い自信がある……いや、でも、際限なく赤くなってるな、もとの色が白いからよりわかりやすい……、……いや、これ、照れだけじゃねえな? もっとその先の、これは……怒りだ!
そう気づいた瞬間、グルッペンは俺を勢いよく突き飛ばして、踏みつけた。
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エス(プロフ) - あわさん» すごくうれしいですありがとうございます……!文だけでなく、grpn以外のキャラクター、オリキャラたちまでお褒めいただいてすごくありがたいです。私が書き出したかった青春の空気感が伝わったようで、すごくうれしいです。ありがとうございます! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 腐女神だぜ☆さん» うれしいご感想ありがとうございます!書きたいものを書きたいように書いた作品でそういっていただけるのはなによりの励みです!読んでくださってありがとうございました! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - スラカさん» ご感想ありがとうございます!!書き手の私の「grpnかわいい〜」という気持ちがあまさず伝わったようでうれしいです笑 読んでいただいてありがとうございます! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - るーかさん» ご感想ありがとうございます!そうですね、そういうことへのきっかけにもなれていたらこれ以上はないです!同性愛のテーマも案外普遍的で、どこにでもあるんだよということが伝わっていたらうれしいです。ありがとうございます! (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 倉の中の石さん» すごくありがたいご感想ありがとうございます!その気持ちが一回ぶん以上の評価として私の胸に届きました……!ありがとうございます!のたうちまわらせることができて狙い通りって感じです……(へへ…)ありがとうございます! (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エス | 作成日時:2019年10月21日 23時