さすがに友は推さない【榎木淳弥】 (ページ5)

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side story. ちょっといいことページ5

今日は本当に気分が悪い。

イライラする。

この時期に似つかわしくない低気圧と、昨日飲みすぎたことによる頭痛に苦しんでいるところだ。

「……あぁ〜」

頭がガンガンする…。

一人で唸っていると、ふと駅前のカフェからブレンドコーヒーの香ばしい匂いが。

(……一杯買うか)

痛みを紛らわすためと、落ち着きを求めて自動ドアを抜けると、パタパタを忙しない女性が後ろから入店した。

そのときは特に何も思っていなかったんだけど。

「14番が呼び出されたらこの札を持ってレジ横のカウンターにお越しください」

「ありがとうございます」

注文を終え、さっきの女性の後ろにぼんやりと並ぶ。

…どっかで似てる人見たことある、ような。

(気のせい、だろうな。いや、どこで見たことあるんだよ。)

ちょっと顔は良いけど、同業者じゃないだろさすがに。

「13番でお待ちのお客様ー」

「はい」

「こちらカフェラテでございます。大変熱いのでお気をつけください」

「ありがとうございます」

彼女がカップを受け取っていよいよ店を出るかに見えたが、固まって立ちすくんでいた。

「…？」

俺は自分のコーヒーを受け取り横目で彼女を覗くと、

「………ぁ"」

死にそうな目でリモコンを見つめていて。

俺はすぐに、「あぁスマホと間違えたんだな」って思った。

「ぶっ………あぁ、すいませ…っ…くくく」

俺が堪えきれずに吹き出すと、ぽっ、と耳を赤く染めてそそくさと立ち去ろうとして。

あなたが掴んだカバンは、俺の物だった。

「あのー！それ、僕のです！」

「んっ……！！！」

なんだか、面白いものが見れた。

「今日は気をつけて下さいね…ふふ」

初対面の人に失礼かと思ったが、少しからかいたくなって本日の健闘を祈っておくと

また彼女は恥ずかしそうに「大変失礼しましたっ！！！」と逃げていった。

(……なんか、可愛いひとだな)

思わず頬が少し緩んだ。

(そろそろ時間か)

ぱち、と頬を少しはたいて気を引き締める。

ちょっとやる気出た、かも。

あぁ、今日は、気分がとても良い。

◇

「あっれ、梅原くんまた一緒じゃん」

「それ、なんでこんなに会うんだろな笑」

「…で、最近はどう？」

「んー…ちょっといいことあった、くらいかな」