No.21 ページ22
海賊は海に生きる。
そんな中で、男というものは不便だと、たまに思うことがある。
「船長さん、みんなと一緒に飲まないの?」
『……』
男ばかりの環境で航海ばかりしていたら、溜まるものは溜まるわけで、時間が経つにつれて店内のクルーが減ってきているのにも気づいていた。
そして、周りから見ると容姿端麗に入るのだろうこの男を、その筋の女性が放っておくはずかまない。
「みんなとあっちで飲みましょう?」
胸元は大胆に開けていて、豊満な胸が綺麗な谷間を形成する。
短いスカートからは、スラリとした足が伸びている。
自分の美を理解し、それを最大限に引き出したような容姿の女性は、ローに寄り添ってきては誘っていた。
「……」
あろうことかそれを無視し、無言で酒を飲むロー。
「ねぇ…」
「うるせぇ、俺はこいつと飲んでるんだ。他へ行け」
女性には見向きもしないロー。
断られた女性の視線が、こちらに向けられているのはすぐにわかった。
先程の色目とはうって変わって、嫉妬に染まったものだということを。
思わずため息をつきたくなる。
『私は一人で飲むのが好きなんだ。行ってきたらどうだ?』
「あぁ?てめぇが勝手に決めるな。お前もさっさとあっちへ行け」
ローがひと睨みきかせると、女性は諦めて去っていった。
『…よかったのか?』
「あんなの、興味ねぇよ」
『意外だった』
「…なにがだ?」
『来るもの拒まず、だと思ってたよ』
鼻で笑うと、視線を向けなくても睨まれたのがすぐにわかった。
「…てめぇにとっての俺はなんだ?」
『……』
その質問の真意はわからなかった。
真意のわからない質問に悩む必要なない。
『観察対象』
漠然と思ったことを口にした。
この男が今後どう動くか知るために船に乗ったのだから、間違ってはいない。
「人を植物みたいに例えるんじゃねぇ」
『じゃあ聞くが、あんたにとっての私はなんだ?』
質問をそっくりそのまま返してやった。
「…どうだかな」
どちらかというと、はっきりと物言う性格のロー。
だからこそはぐらかす素振りの言葉に、少し違和感は感じた。
だけど私は特に追求はしなかった。
そんなことを気にする必要はないと思い、グラスの中の酒を飲み干した。
視線を逸らしていたはずのローが、気づかれないように視線を私に戻していることにも、その瞳の奥に籠った熱にも、私は気づかなかった。
フードに隠れた横顔を盗み見る。
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きのこ(プロフ) - すごく面白くてびっくりしました!ストーリーの面白さとキャラの良さが際立ってます!!また無理なさらない程度に更新してくださるとうれしいです^ ^ (2020年5月12日 21時) (レス) id: 2f2822d021 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヒカリ | 作成日時:2020年3月8日 2時