・ ページ30
無事な彼の姿に長い息を吐き切った涼介さんが、よかった。と誰にも拾われない程の小さな声で呟く。
泣き出しそうなケンタくんの肩を抱く啓介くんが声をかけるよりも前に、こらえきれなくて飛び出してしまう。
たった少し、視認できる距離なのに、こちらへ向かってきてくれる刹那の時間がどうしようもなく惜しい。
やっと会える。やっと触れられる。伝えたいことが沢山あって、心が溺れてしまいそうで堪らない。
「拓海くんｯｯ……！！」
共に上ってきた仲間に囲まれていた拓海くんは、私の声に弾かれたように顔を上げる。
駆けてくる私に気づき垂れた瞳が刮目する瞬間、その大きな体に飛び込んだ。
「おめでとう…っ！」
私の体躯では抱き込むことは叶わないから、めいっぱいの背伸びで首筋に手を回す。
温もりで無事を確かめられる幸せに、言葉にならない感情が込み上げ抑えられない。
喉奥が詰まる様に痛くて、鼻先がつんとして、絞り出した声が潤む。
ありったけの力で抱き込んでしまう私の背へそっと、触れた指先。
「……ありがとう、ございます。」
大好きな、優しい声。
甘くて、目を瞑れば包まれている様な暖かな声が耳元で零れ落ちて、同時に抱き込む腕が力を籠める。
それでいて気遣う様に優しくて、宝物を包み込むみたく大切に抱きしめ返してくれた愛おしさに、口元が緩んだ。
爪先立ちが戻って、見上げた拓海くんの優しい眼差しが嬉しくて顔がほころぶ。
「おかえりなさい。」
ブラウンの瞳が一瞬丸みを帯びて、すぐに細まり微笑みを浮かべる拓海くん。
「…ただいま。」
安息を伝える柔らかな笑顔を、私は一生、忘れないと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» お楽しみ頂けた様で嬉しいです〜〜！！ありがとうございます😊❤😍✨ (3月12日 7時) (
レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - やばい！！！！やばいです😭😭😭拓海いぃぃぃぃぃいいいい好きだァァァァァ (3月11日 4時) (レス) @page41 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - るさん» こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます😊💕💕もっと楽しんで頂けますよう更新頑張ります！ (11月24日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高すぎます。本当にありがとうございます😭😭😭😭😭更新楽しみにしてます🥰 (11月23日 8時) (レス) id: 74e8a14f0e (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - わんさん» いにで大好きなのですが余りに供給が少なくついに手を出してしまいました…！お読み下さりありがとうございます💕これからもお楽しみ頂けるよう頑張ります！ (11月22日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：み
| 作成日時：2023年9月29日 15時
