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「う、うそだよ、覚えてる」
「…本当ですか?」
「…ん。…ちゃんと、本音だ、し」
そんな、ずるいじゃん。急になに?どうしてそんな悲しそうな顔するの!?
私が寂しいって甘えた事を無かった事にするたったそれだけで、悲しんでくれるの?
自惚れと、好きと、驚きと疑問と。穏やかな彼の感情の高低差に、私の頭は急に回転し始める。
「…じゃあほんとに、寂しかったんですね」
「…うん」
伺う様に見つめる瞳にたじろいで、羞恥も前に頷いてしまう。
「…離れたくないのも、本当ですか」
「…ほん、と」
至近距離で催促される声は未だ切なげで、まっすぐ尋ねられてはとても弱く、二の腕辺りに顔を埋め小さく頷く。
怒らせた?悲しませた?回る思考に瞬時にストップをかけたのは、
「…ふぅん?」
やけに満足げにトーンの上がった声。
はっとして見上げるも、もう遅い。
「じゃあもう少し、くっついてましょうか」
「っ、…ばか…!」
私を見下ろす瞳が緩やかに痩せて、たくらむ様ないたずらな笑み。
そのままベッドに逆戻りもすぐに、シーツに手首を押さえつけられ首筋に顔を埋める拓海くん。
ドッッ、と心臓が勢いよく騒ぎ始めて、首筋を辿る唇に背が甘く震える。
「拓海く、ッ…!だめ、…も〜〜…!!いじわるした!!」
「Aさんが忘れたとかいうからでしょ」
「だ、だって…!!」
「だって何ですか?」
両手に力を入れてもぴくりとも動かない。
そのうえ耳へ唇をつけたまま囁かれてしまっては力も抜ける一方で為す術もなかった。
「っ〜…!!ばかばかいじわる!!っ…ちょ、ゃ、待ってせめてシャワー…っ!」
じたばた動かしていた足も膝裏に手をあて持ち上げられ、自分の身体を入れ込むように距離を詰める拓海くんに心臓がひっくり返りそうになる。
「いっすよそのままで」
「よくなッッ…ん〜〜…ッッ!!」
すくいあげる様なキスに言葉は呑まれて、ちぅ、ちゅ、と何度も重ねられるそれに段々思考が朧げになる。
苦しくて呼吸もうまくできないのに、触れたいと思ってくれてるのが余計に背を押し加速してしまうのだ。
「っ、……いじわる」
「…よく知ってるでしょ」
どうしてこうも、スイッチが入れば途端に意地悪な男の子が加速するんだろうというか、負けん気が強いというか。
何百回、思っただろうか。
そもそもそんなギャップさえも堪らなくなるのだから、恋というのは盲目を超えるようである。
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み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» お楽しみ頂けた様で嬉しいです〜〜!!ありがとうございます😊❤😍✨ (3月12日 7時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - やばい!!!!やばいです😭😭😭拓海いぃぃぃぃぃいいいい好きだァァァァァ (3月11日 4時) (レス) @page41 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - るさん» こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます😊💕💕もっと楽しんで頂けますよう更新頑張ります! (11月24日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高すぎます。本当にありがとうございます😭😭😭😭😭更新楽しみにしてます🥰 (11月23日 8時) (レス) id: 74e8a14f0e (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - わんさん» いにで大好きなのですが余りに供給が少なくついに手を出してしまいました…!お読み下さりありがとうございます💕これからもお楽しみ頂けるよう頑張ります! (11月22日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2023年9月29日 15時