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久しぶりにお酒を楽しんだ翌朝、実に、記憶はハッキリとしていた。
「……ごめん拓海くん……」
起こしにきてくれたであろう拓海くんを前にベッドの上で土下座をし、段々鮮明になっていく記憶が羞恥を引き起こしころりと転がった。
いつもの香りのシーツが、私を受け止める。
「別に謝ることないですけど…」
困惑しながらも隣に座り、乱れたままの髪を毛流れに沿って指先がとかす。
帰宅早々我儘を爆発させたにも関わらずそのまま寝落ちというなんとも勿体ない事をしてしまったせいで、悔しいやら申し訳ないやら。
にしても私、思っていることをすべて話し過ぎではなかろうか。
拓海くんが行動を起こすときに、私は準備万端だよ!!ってかっこよく立ち上がるべきではなかろうか。
「頑張ってる過程は内緒の方が…かっこいいじゃん…」
「……俺と一緒に住む為の、ってことですか」
拓海くんの太腿を枕にするべくよじのぼりお腹に腕を回す。
顔ごと埋め深く息を吸ったものの、羞恥を煽る部分を告げられ吐いた息は細かった。
「……忘れた」
「…忘れましたか」
「……うん、忘れた」
一緒にいたいのも事実。もはや拓海くんと愛車の為だけに働いているようなものなのも事実。
知られるのはいいけれど昨夜の様に、「あなたも私の為に頑張ってくれるのか」などと大逸れたことを強請ってしまったのは、いやはや随分、想定を超え頬は熱かった。
「……覚えてねぇの?」
「……」
声が少し低くなって、びくりと体が震える。
無言の抵抗で服を掴むけど、催促するように頭を撫でる大きな手。
余計に潜り込んでも、髪をのかし耳を辿る様に撫でられ指先に力が籠る。
「…寂しかったのも、…離れたくねぇって言ったのも、覚えてねぇの?Aさん」
いつもの穏やかさとは違う、妖艶な声。
甘えたような、年相応よりも随分柔い、それでいて妙に色香を含む声に心の奥がきゅぅと疼く。
明かりのない室内でしか聞き覚えのない声が明朝に響くというのは、なんだか無性に理性を削っていく。
「…っ、」
耳を遊ぶ指先に、開きかけた口を慌てて閉じる。
自分の鼓動が脳に響く気さえ、する。
「…悲しいですね、…俺は凄く、嬉しかったのに」
「ぇ、」
先程の食べられてしまいそうな誘われる声とはてんで裏腹、純粋そのものなしょげた言い回しに驚かない訳もなく、勢いよく上体を起こす。
絡んだ視線が悲し気に逸れるから、急に心が傷み服の裾を掴んだ。
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み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» お楽しみ頂けた様で嬉しいです〜〜!!ありがとうございます😊❤😍✨ (3月12日 7時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - やばい!!!!やばいです😭😭😭拓海いぃぃぃぃぃいいいい好きだァァァァァ (3月11日 4時) (レス) @page41 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - るさん» こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます😊💕💕もっと楽しんで頂けますよう更新頑張ります! (11月24日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高すぎます。本当にありがとうございます😭😭😭😭😭更新楽しみにしてます🥰 (11月23日 8時) (レス) id: 74e8a14f0e (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - わんさん» いにで大好きなのですが余りに供給が少なくついに手を出してしまいました…!お読み下さりありがとうございます💕これからもお楽しみ頂けるよう頑張ります! (11月22日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2023年9月29日 15時