夏の想い出を共に ページ1
次々と打ち上げられていく花火たちを、しばらく互いに見惚れるみたく眺めていたのだと思う。
寄り添うように頭を預けてきたAさんが、絡んでいる指先を撫でて遊び、呟いた。
「……綺麗だね、」
俺へ身を預け、花火を眺める瞳を透かす睫毛とか、柔らかそうな頬を見つめ頷く言葉を探す。
やがて視線に気づいたのか俺を探しまっすぐに見つめた彼女は緩く笑った。
先程まで甘味を享受していた唇が緩く弧を描き、端正な笑顔は見惚れずにいられない。
「……そうですね」
彼女が促す花火もそうであるが、それよりもよほど、と感じながら頷く俺に今一度幸せそうに笑んだAさんは、俺の腕に額を擦る様に押し付け俯く。
手をつなぐだけでは物足りないと言いたげに腕へ絡む仕草に、花火なんてそっちのけで触れたくなるのも仕方がないのだ。
「…Aさん…？」
頬を包むと、唇を内側に巻き込むからぷくりと膨れたのを感じる。
「…花火、見なよ。」
親指で目元を撫でると、照れくさそうに手のひらへすり寄って呟く。
不服そうにくぐもった声とは反対に緩む口元を隠そうとする仕草はあどけない。
「…にやけてんのバレてますよ」
「私じゃなくて花火見なさい」
いちごを残すままの細い串を咥え開いた手が、指先だけで俺の頬を押す。
かすかに甘い香りがして、羞恥へのごまかしか最後の一つをかじる口元を眺めていた。
「…もうすぐ終わっちゃうよ」
「……そうですね」
感じた視線を逸らしたいのかは定かではないが、彼女が夜空を見上げるから同じように視線を上げる。
フィナーレと思しき花火たちはより一層輝きを増していて、消える瞬間がないのではというくらい大盤振る舞いのそれらをのんびりと味わった。
打ち上げ花火なんて、何年ぶりに見ただろうか。
振り返った記憶は、あまり鮮明には出てこない。
親父と男二人仲良く見に行くなんて事がある訳もなく、ランドセルを背負うにも満たない頃へ記憶をはせていれば絡んでいた指先を再び撫でて遊んだAさんが、視線は夜空のままに呟く。
「…来年も見ようね」
「……はい」
舞い戻る想い出は片手に余ってしまうくらいしか残っていないけれど、この先を約束してくれる彼女と共に増やしていけるのなら、どんな場所だって訪れていきたいと思った。
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み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» お楽しみ頂けた様で嬉しいです〜〜！！ありがとうございます😊❤😍✨ (3月12日 7時) (
レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - やばい！！！！やばいです😭😭😭拓海いぃぃぃぃぃいいいい好きだァァァァァ (3月11日 4時) (レス) @page41 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - るさん» こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます😊💕💕もっと楽しんで頂けますよう更新頑張ります！ (11月24日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高すぎます。本当にありがとうございます😭😭😭😭😭更新楽しみにしてます🥰 (11月23日 8時) (レス) id: 74e8a14f0e (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - わんさん» いにで大好きなのですが余りに供給が少なくついに手を出してしまいました…！お読み下さりありがとうございます💕これからもお楽しみ頂けるよう頑張ります！ (11月22日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：み
| 作成日時：2023年9月29日 15時
