・ ページ3
「後部座席片付けるから、ちょっと待ってね」
使いっぱなしで適当に投げやっていたレンチやらパーツ、工具類を後ろへ移動させ、どうぞ〜、と指し示す。
大はしゃぎで乗り込む後ろで表情の晴れない不安気ボーイ改め拓海くんと呼ばれていた子が気にかかり、そっと伺った。
「お名前は、拓海くんであってる？」
「は、い…」
「よかった。拓海くん、無理に乗らなくてもいいよ。体調とかは大丈夫かな？」
「おい拓海ィ！！早く来いよぉ！！」
気持ち悪かったりする？と首を傾げたものの、いそいそとシートベルトをつけ車内から叫ぶ彼に引っ込みがつかなくなってしまった様で困ったように私を見る。
別に怖くはないんスけど…、と、反抗してくる部分の可愛らしさに頬が緩みつつ、謝罪と共に頭を下げる姿に礼儀正しい子だな、と思った。
「うん。楽しめる様に頑張るね」
申し訳なさそうな顔に笑みで返し、ドアを閉め自分も車に乗り込む。
「じゃあ行くねぇ〜、後ろのシートベルト頼りないからちゃんと掴んでてね。気持ち悪くなったら叫んで教えて」
「はいｯｯ！！よろしくお願いしますｯｯ！！」
「うす…」
ガウンｯｯ、と重厚なサウンドと共にライトが夜闇を照らし、コーナーに入るまでは緩やかに速度を上げていく。
「拓海ってば登るときもすっげぇ叫んでたんですよ〜、怖い怖いって！」
「やめろよイツキ…あれはお前にはわかんねぇよ…」
男ならビビらずに…と一生懸命話すのが面白可愛くて、相槌を打ちつつ一つ目のコーナーは至って普通の速度で抜ける。
「流石にこれだけ時間おけば…普通に走っても追いつかないよね」
怖かったら言ってね。と一声かけてシフトアップし、次のコーナーへと集中した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：み
| 作成日時：2023年8月10日 14時
