★手を繋いで ページ3
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『Aー?』
「ん、ちょっと待って!」
放課後になりざわつく教室。
ドアにもたれて私の名前を呼ぶ岸の元に慌てて駆け寄ると、優しい目を向けられる。
そんな視線にもようやく慣れてきて。
『んあー!ねむ!』
「チャイム鳴るまで爆睡してたくせに」
『なに、俺のこと見てたのー?』
「…ちがうし、視界に入っただけ」
席替えで離れてしまったけど、その席から岸を眺めるのも日課になった。
ストレートな岸とは対照的に素直になれないのは相変わらずだけど、それでも岸はぜんぶ分かってるかのように私の頭をわしゃわしゃと撫でて。
『早く帰ろーぜ!』
昇降口で靴を履き替えたあと、いつものように大きくて綺麗な手を差し出す…はず、なんだけど。
「…岸?」
『ん?どした?』
「……や、なんでもない…」
校門を出ても、一向に差し出してくる気配がなくて。
さっきのことで怒ったのかな、なんて一瞬考えたけど、いつも通りのテンションで話しかけてくるからどうやら怒ってるわけではないらしい。
あの岸のことだから、忘れてる、っていうのもありえる。
…今日は繋がないのかな。
楽しそうに話す岸に相槌を打ちながら、身振り手振りで伝えようと忙しなく動かしている岸の手を無意識に目で追いかけていて。
ずっと岸のほうから繋いでくれたから、もはや繋ぐのが当たり前だと思っていたけど。
繋がないと、こんなに寂しい気持ちになるなんて思わなかった。
『A?』
「……っへ、なに?」
『いや、さっきからぼーっとしてるから』
「…え、そう?」
何もないならいーけど、と不思議そうに見つめながらもまた話を再開し始める岸に、早く気づいてよ!なんて心の中で叫んでみる。
世の中の女の子はさぞかし可愛らしくおねだりするんだろうけど、あいにく私はそんなハイスペックな能力も愛嬌も持ち合わせていない。
でもいつまでもこのままじゃだめだとも思ってて。
「…き、きし…」
ここ最近で一番の勇気を振り絞った。
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倖 - どひゃー!!更新ありがとうございます!!岸くんとこんな放課後を過ごせる人生に生まれたかった… (2019年5月1日 0時) (レス) id: 825a5581ca (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - 倖さん» ありがとうございます〜!まだまだ更新予定のお話もたくさんありますのでぜひ楽しみにしていてください! (2019年4月30日 13時) (レス) id: 7538cd8bd5 (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - 夏美さん» お返事遅れてしまい申し訳ありません(>_<)ツボだなんて嬉しいですありがとうございます…!マイペースではありますがこれからも読んで頂けると幸いです! (2019年4月30日 13時) (レス) id: 7538cd8bd5 (このIDを非表示/違反報告)
倖 - 一気に読みました…岸くん素敵すぎる!!!更新超絶待機してます!!! (2019年4月15日 3時) (レス) id: 825a5581ca (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 1作目と2作目一気に読んだのですが、なのさんの描く岸くんがめちゃくちゃツボで好きです!続きも楽しみにしてます! (2019年3月20日 16時) (レス) id: a623f727bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なの | 作成日時:2019年3月19日 20時