青春れもねーど。【Yuta.K】 (ページ31)

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「ごめん、遅くなった」

『んー別にだいじょ………』

五分前にもうすぐ着くと連絡があったから、玄関を出るともう待っててくれて。
私の声に顔を上げた岸が固まった。

じっと私を見つめたままで、やっぱり変だったかな、と一気に不安になる。

しばらく沈黙が続いたあと、岸が口を開いた。

『…ぐうじさんに何か聞いた？』

「じんちゃん…？いや、何も」

『じゃあ紫耀？』

「なんで？…………っわ、」

そんなことを言うから不思議に思ってると、突然腕を引き寄せられて。

腕は回されてないけど、抱きしめられてるみたいに身体が密着する。

そんな状況で

『……すっげー俺の好みなんだけど』

なんて耳元で囁かれたら、心拍数が上がらないわけがない。

悩みに悩んで買った、水色のちょっとだけ大人っぽい浴衣。
悩んだ甲斐があったなと思うけど。

「…ここ、家の前」

『っだー！わり！！でもかわいい！俺のタイプど真ん中だから！』

素直じゃない私はこんな返ししかできない。
それでも岸は全部分かってるみたいにストレートに伝えてくれるから。

すきだなあって、思う。

『うっわ、去年より多くね？』

「たしかに…」

地元では有名な花火大会なだけあって、入り口あたりから人の数がすごい。

「ちょっと、岸、速い…」

浴衣を着ている私とは違って、どんどん先に進んでしまう岸に声をかけると

『あ、そっか、浴衣…わり』

「…っわ、」

ぶっきらぼうに掴まれた手はそのまま岸の手と繋がって。
変わらずどんどん先に進む岸の耳はこれでもかというほど赤く染まっている。

「…ふふ」

『…なんだよ』

「なんでもない」

私の笑い声に振り返った岸の顔も同じくらい赤くて。

胸のあたりがふわふわして、しあわせ。